研究集会
「リソスフェアの短波長不均質性のイメージングとモニタリングに関する研究の高度化
−地殻活動領域の構造特性の時空間変化の解明に向けて−」

日時:2011年9月7日(水)〜8日(木)
場所:東京大学地震研究所 2号館第1会議室
地球内部には地震波の波長と同程度のスケールの短波長不均質構造が存在しています。地震波の散乱に関する理論的研究の進展によって、リソスフェアの短波長不均質構造が求められ、近年の地震観測網の整備によって日本列島全域にわたる分布も得られるようになってきました。また、稠密地震観測やアレイ観測のデータから、地震波速度や減衰構造、散乱係数の3次元空間分布が数kmのスケールでイメージングできるようになってきました。さらに、最近の地震波干渉法の発展によって、ランダム波群のように見えるコーダ波や微動記録の相関解析から、地震発生に関連した構造の時間変化も検出されるようになってきました。このような研究の進展によって、断層帯など地震発生帯の不均質性やその地震発生との関連だけでなく、火山地域の散乱特性やスロー地震活動の時空間的な不均質性についても議論できるようになってきています。本研究集会は、理論、観測、実験、シミュレーション等の広範囲にわたる研究をとおして、地震発生帯だけでなく、火山地域やスロー地震活動域など地殻活動領域の構造の時空間変化の解明に向けて、リソスフェアの短波長不均質性のイメージングとモニタリングに関する研究の高度化をはかる目的で開催されました。以下に、講演プログラムおよび要旨を掲載します。本研究集会の実施およびweb掲載等にご協力いただいた荻野スミ子氏、山口彰子氏および鶴岡弘氏にお礼申し上げます。本研究集会は、東京大学地震研究所共同研究プログラム(課題番号2011-W-03)の援助を受けました。
研究集会代表者: 北海道大学 大学院理学研究院 村井芳夫
所内担当者: 地震研究所 数理系研究部門 山下輝夫
2011年9月30日

プログラム

2011年9月7日(水)

13:00 はじめに

【座長 上野友岳】

13:05 2008年岩手・宮城内陸地震震源域付近で発生した余震のP波初動到来方向の異常
土井一生・川方裕則(立命館大理工)

13:25 東北地方太平洋沖地震の余震に見られる反射波とその解釈
小菅正裕(弘前大理工)

13:45 地震波散乱研究の知見を緊急地震速報へ
干場充之(気象研)

14:05 強震動記録の相関解析(続き) −構造情報抽出の試みに向けて−
渡辺俊樹(名古屋大環境)・清水英彦(石油資源開発)

14:25 関東平野の地震基盤構造:地震波干渉法によるS波反射強度の推定
吉本和生(横浜市大・生命ナノ)・平田 直・笠原敬司・小原一成・佐藤比呂志・酒井慎一・鶴岡 弘・中川茂樹(東大地震研)・木村尚紀・棚田俊收(防災科研)・明田川 保(神奈川県温地研)・中原 恒(東北大理)・木下繁夫(横浜市大・生命ナノ)

休憩(20分)

【座長 土井一生】

15:05 伊豆半島東方沖の群発地震と地震波干渉法による速度構造変化の検出
上野友岳・齊藤竜彦・汐見勝彦(防災科研)

15:25 東北地方太平洋沖地震に伴う、中部地方の地震波速度変化の検出について
大見士朗(京大防災研)

15:45 大地震に伴う地震波速度の時間変化 −KiK-netを用いた2011年東北地方太平洋沖地震に伴う地震波速度と偏向異方性の時間変化の検出の試み−
高木涼太・岡田知己(東北大理)

16:05  M〜2の鉱山地震の発生が見込まれる断層を対象とした透過弾性波モニタリング −南アフリカEzulwini金鉱山
川方裕則・吉光奈奈(立命館大理工)・中谷正生(東大地震研)・J. Philipp(GMuG)・土井一生(立命館大理工)・直井 誠(東大地震研)・T. Ward・G. Morema(Seismogen)・V. Visser・S. Khambule・T. Masakale(OHMS)・A. Milev・R. J. Durrheim(CSIR)・L. Ribeiro(First Uranium)・M. Ward(Seismogen)・小笠原 宏(立命館大理工)

16:25 南アフリカ金鉱山の断層近傍における雑微動記録から求めた相互相関関数と透過弾性波記録の比較
吉光奈奈・川方裕則(立命館大理工)・中谷正生(東大地震研)・J. Philipp(GMuG)・直井 誠(東大地震研)・土井一生(立命館大理工)・A. K. Ward(Seismogen)・V. Visser(OHMS)・G. Morema(Seismogen)・S. Khambule・T. Masakale(OHMS)・A. Milev・R. J. Durrheim(CSIR)・L. Ribeiro(First Uranium)・M. Ward(Seismogen)・小笠原 宏(立命館大理工)

懇親会(17:30〜) 会場:1号館7階

2011年9月8日(木)

【座長 武村俊介】

9:00 濃尾断層帯周辺における地震波干渉法から得られた減衰率の推定
辻 清根・平松良浩(金沢大自然)・濃尾合同観測グループ

9:20  Spatio-temporal variations in coda attenuation associated with the 2011 Off the Pacific Coast of Tohoku, Japan (Mw 9) Earthquake
S. Padhy(東大情報学環/東大地震研/National Geophysical Research Institute)・S. Takemura・T. Takemoto・T. Maeda・T. Furumura(東大情報学環/東大地震研)

9:40 長期海底地震観測から得られた北海道・根室沖の大地震発生域周辺の地震活動とコーダQ-1
村井芳夫(北大理)・日野亮太・伊藤喜宏・鈴木秀市(東北大理)・金田義之(海洋研究開発機構)

10:00 東北日本における地下構造の次元圧縮解析
高橋 努(海洋研究開発機構)

休憩(20分)

【座長 江本賢太郎】

10:40 小口径強震計アレイで観測された2011年東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)の破壊伝播
中原 恒・佐藤春夫・西村太志(東北大理)・藤原広行(防災科研)

11:00 エネルギー等分配成立過程の小規模アレイによる観測(序報)
山本 希・中原 恒・江本 賢太郎(東北大理)

11:20 新湯地震計アレイおよび広帯域地震計でみた火山性微動
松本 聡・清水 洋・松島 健・植平賢司・山下裕亮・中元真美・宮崎真大・千藏ひろみ(九大理)

11:40 地震計アレイ観測による2005年福岡県西方沖地震の震源域周辺における散乱体分布の推定
中元真美・松本 聡(九大理)

昼食

【座長 齊藤竜彦】

13:20 粘性流体を含む亀裂によるSH波散乱の2次元差分法シミュレーション
椎名高裕(東北大理)・河原 純(茨城大理)・岡元太郎(東工大理工)

13:40 散乱波の時間・周波数領域での形状と散乱体の物性量との関係
蓬田 清(北大理)・平 貴昭(加州大バークレー校)

14:00 ノイズ相互相関関数に基づく散乱媒質のグリーン関数の導出:多重散乱の場合
佐藤春夫(東北大理)・L. Margerin(C.N.R.S., France)

14:20 スロースリップに対する透水係数の異方性の効果
山下輝夫(東大地震研)

休憩(20分)

【座長 中原 恒】

15:00 マルコフ近似を用いたS波とScS波の解析から推定されるランダム不均質構造
江本賢太郎・佐藤春夫・西村太志(東北大理)

15:20 超稠密地震観測網Hi-netの広帯域利用 −地震波のモアレ現象−
前田拓人(東大情報学環/東大地震研)・小原一成(東大地震研)・古村孝志(東大情報学環/東大地震研)・齊藤竜彦(防災科研)

15:40 リソスフェア内の不均質構造と表層地形が地震波動場におよぼす影響 −高密度地震記録とシミュレーションの比較による検討−
武村俊介(東大地震研)・古村孝志・前田拓人(東大情報学環/東大地震研)

16:00 東北地方太平洋沖地震の津波コーダ
齊藤竜彦(防災科研)・稲津大祐(東北大理)