2013/10/10更新 
 東京大学情報学環 総合防災情報研究センター 
東京大学地震研究所 地震火山情報センター(兼)
 鷹野 澄 

IT強震計に関する研究グループです
(参加研究者募集中)

IT強震計に関する産学連携グループです
(参加企業募集中)
 トピックス
  • 2013/10/07〜10…日本地震学会2013年秋季大会においてIT強震計関連の出展展示
  • 2013/10/01…役員のページを更新しました
  • 2013/05/19〜24…日本地球惑星科学連合2013年大会においてIT強震計関連の出展展示

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IT強震計とは何か
建物の固有の揺れ
建物の弱点を探る
補強の効果を確認
設置方法・利用例
観測された記録例
新センサーの開発
今後の予定
協力者等募集
問い合わせ先
IT強震計とは何か

 大地震による災害を軽減する為には、小さな地震の時に私たちの住宅や会社、学校など、身近な場所が実際にどのように揺れるのかを 調べて、その弱点を探り、効果的な耐震対策をすることが有効と考えられます.IT 強震計は、このような目的で利用者自身が設置して利用する新しいタイプの安価な強震計として考案されました.

 IT強震計の利用者は、企業や学校、一般住民などです.利用者が、建物や 構造物などの調べたい場所にIT強震計を設置して、小さな地震のユレを実際に計測して、そのユレの特徴を調べることを目的としています.単 に調べるだけでなく、建物や構造物などの弱点を探って、効果的な耐震補強を行ったり、耐震補強の前と後でのユレを比較して、計算どおりの補強ができている か確認するなど、様々な活用が期待されます.

図1 IT強震計の利用

建物の固有の揺れ

 建物には固有の揺れやすい周期があります。これを建物の固有周期と 言います。大地震により地面から届いた波に建物の固有周期に近い周期が含まれていると、建物は共振現象を起こして大きく揺れます。

図2 建物の固有の周期と地震の揺れ (地震調査研究推進本部参考資料より)
 低い建物は、短い周期 の地震の波が届くと大きく揺れます(左の図)。一方高層ビルのような高い建物や長い橋などは、長い周期の地震の波が届くと大きく揺れます(右の図)。規模 の小さい地震ではあまり長い周期の波は生成されませんが、大地震になると長い周期の大きな波が生成されてそれが遠くまで届くということがしばしば発生しま す。そこで、建物の固有周期を事前に調査して、大地震の際に、建物がどのように揺れるかを確認しておくことが重要です。

建物の弱点を探る

 建物の弱点は、固有周期だけでなく、地盤の良し悪し、経年劣化、構造不整合、強度不足などの様々な視点から探ることが必要です。このすべての調査にIT 強震計が利用できるとは限りませんが、例えば、地盤に設置したIT強震計をネットワークを介して周辺地域内で共用可能にすれば、周辺と比較した地盤の良し 悪しを確認することができます。建物の基礎と最上階にIT強震計を設置すれば、弱い地震でも建物の揺れの異常を検出することができますし、さらに長期間設 置すれば、建物の経年劣化の度合いをモニターすることもできます。構造が複雑なものやピロティーのあるものなどは、さらに途中階の要所要所にもIT強震計 を設置すれば、部分的な揺れの異常を調べることもできるでしょう。

補強の効果を確認す る

 耐震診断で補強が必要となった場合には、補強の前と後で、IT強震計により建物の揺れを観測して、補強の効果を確認できることが期待されます。残念なが らすべての補強について確認できるのではないのですが、補強により強度が増して固有周期が変化したり、ねじれが小さくなるなどの変化を、IT強震計で捉え ることが可能です。これをやる場合には、特に補強の前にいい記録が取れることが重要です。あらかじめ補強することがわかっている場合には、早めにIT強震 計を建物の要所要所に多数設置して補修前のデータを取っておくことをお勧めします。

設置方法・利用例

 IT強震計のセンサーの設置方法や利用方法については、誰でも簡単に設置し利用できるようにIT強震計コンソーシアムなどでマニュアル化する予定です。
 基本的にセンサーは、調査したい場所を複数のセンサーで囲むように設置するといいようです。例えば、建物への地震波の入力を調べるには、建物周辺の地盤 と建物の最下階に設置します。建物の揺れを見たい場合は、最下階と最上階に設置し、高い建物では更に途中階にも設置します。建物のねじれ具合を見たい場合 は、最下階や最上階など同じフロアに複数設置します。建物の構造が複雑な場合は、さらに多数設置して細かい挙動を調べます。

図3 設置方法・利用例
 こうして多数設置したセンサーからのデータを、建物内のネットワークを介してサーバPCに一旦集めます。その記録を収録しておき、 リアルタイムでモニターしたり、地震時に収録されたデータから建物の揺れをアニメーションで再現することが可能です。

図4 地震時の観測記録から建物の揺れをアニメーションで再現

観測された記録例

 以下は、地震研究所で観測されたIT強震計(試作機)の記録をもとに、建物の揺れをアニメーションで再現したものです。
IT強震計でみた2006年 6月2日伊豆半島東方沖(M4.2)による建物の揺れ
IT強震計でみた2006年8月31日東京湾地震 (M4.8)による建物 の揺れ
IT強震計でみた2007年1月13日千 島列島東方(M8.2)による建物の揺れ
IT強震計でみた2007年3月25日能 登半島地震(M6.9)による建物の揺れ
IT強震計でみた2007年7月16日新 潟県中越沖地震(M6.8)による建物の揺 れ
IT強震計でみた2007年8月16日千 葉県東方沖の地震(M5.3)による建物の 揺 れ

新センサーの開発

 現在のIT強震計(試作機)では、震度1程度の弱い地震動でも建物の揺れを捉えて再現することができますが、もしセンサーの性能がより高性能であれば、 震度0以下の非常に弱い揺れや常時微動でも建物の揺れの特徴を調査できるようになります。
 震度1の地震に比べて震度0の地震の数は数倍増えますので、観測できるチャンスも数倍増えることになります。もし常時微動観測が可能であれば、普段地震 のない地方でも利用可能になります。このようなことから、IT強震計研究会では、安価で高性能のセンサーの重要性を提唱してきました。
 これまでは、そのような高性能センサーを使った地震計は、非常に高価で手軽には利用できませんでしたが、このたび、IT強震計研究会に参加していただい ている複数の企業の方々のご協力により、現在のIT強震計試作機より約100倍高性能で、価格は大幅に安くした新しいセンサーモジュールの開発が進められ ています。これは、2008年5月に発表され、2008年中には製品化されてOEM供給される予定です。

今後の予定

 想定されている首都直下地震では、首都圏の多くの建物や構造物が、未知の強い地震に何度も襲われます。その前にIT強震計を設置して、適切な耐震対策を 実施しておくことが重要です。また、最初の強い地震の後に、IT強震計のネットワークを利用して建物の被害状況の早期把握を行い、次の強い地震に備えるこ とが災害軽減には重要であると考えています。
 そこで、今後は協力者を募って、性能の良いIT強震計を多くの建物に設置してもらい、その揺れのデータを地震研に収集して、IT強震計研究会などを通じ て解析を進めて建物の臨床データとしてデータベース化することを予定しています。これにより、IT強震計による建物の健全性診断(ヘルスモニタリング)の 技術開発を急いで、首都直下地震の震災軽減に貢献したいと考えています。
 また、同時に、IT強震計と緊急地震速報を併用した情報提供システムを開発し、工場など重要施設の安全確保に役立つようなものを開発していきたいと考え ています。

参加者・協力者の募 集!

 IT強震計研究会やIT強震計コンソーシアムでは、研究者や企業の参加者ならびに協力者を募集しています。IT強震計を用いた技術開発に興味のある研究 者や企業の方は、下記までご連絡ください。
 また、IT強震計を試験的に導入して、建物に多数設置して観測していただく協力者(ビル管理者をされている企業など)についても、近く募集開始する予定 です。ご関心のある方は、下記お問い合わせ先までご連絡ください。
、IT強震計が、建物の「聴診器」として広く普及できるように、皆様のご協力をお願いしたいと思います。

問い合わせ先

 IT強震計について、あるいはIT強震計研究会やIT強震計コンソーシアムについて、あるいは、IT強震計の試験的な導入希望な どのご質問、お問合せは、
 [こ ちらのフォーム]
からお願いします.

〒113-0032 東京都文京区弥生1−1−1
 東京大学地震研究所 地震火山情報センター内
   IT強震計コンソーシアム 事務局 FAX:03-3814-5507
〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1
 東京大学大学院情報学環 総合防災情報研究センター(CIDIR)
   教授 鷹野澄 電話 03-5841-5760