EIC地震学ノート No.124             June 29, 2002

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析(暫定解)◆ ------------------------------

 2002年6月29日ウラジオストックの深発地震(M7.3)

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●概略・特徴:6月29日朝3時19分ごろ(現地時間)、ロシア・中国国境近くで
大規模の深発地震が発生しました。USGSによる速報震源は次の通りです。

     発生時刻      震央           深さ    M
 6/28 17:19:30 (UT)    43.77°N  130.72°E   564km 7.3

●データ処理:IRIS-DMCから収集した広帯域地震計記録のうち、6地点のP波上下動
を用いました。初めに、点震源でメカニズムを決定、次いで、断層面を固定して断層
すべり分布を求めました。

●結果:得られた震源モデルを図1に示します。
主な震源パラメータは次のとおりです。

 深さ(破壊開始点) H = 565 km 
 走向、傾斜、すべり角 = (186, 79, 82)
 地震モーメント   Mo = 1.0x10**20 Nm    (Mw = 7.3)
  破壊継続時間(主破壊) T  = 13 s
 断層面積(主破壊)  S=50km×30km
 食い違い      Dmax = 1.1 m    D =Mo/μS = 0.4 m  (μ=160GPa)
 応力降下     Δσ = 4.3 MPa

●解釈その他:メカニズム解は鉛直面と水平面にP波節面を持ちます。このうち、
鉛直面を断層面とする方が波形の一致は有意に良くなります。したがって、沈み込
むプレート(スラブ)内の圧縮力による(Downdip-compression)縦ずれ断層と考え
られます。断層すべりは浅い方から深い方へ向かい、大きく2個のアスペリティか
ら成ります。
 このスラブ内の深発大地震は沈み込み付近(太平洋沿岸)の大地震発生と関連が
あるとの説もあり、注意深く見ていきたいと思います。

<参考> 今回とほぼ同じ場所で、1994/07/21(Mw 7.3)と1999/04/08(Mw7.0)の
深発地震がありました。(後者についてはEICノート#60参照)
                            (文責:菊地・山中)