EIC地震学ノート No.48                  Jul 21, 98

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析(暫定解)◆ ----------------------------------------------

7月17日パプアニューギニアの地震(Ms 7.0)

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● 概略・特徴: 7月17日夜(日本時間午後5時49分)、パプアニューギニア
北西部沿岸でMs7.0の地震がありました。この地震で西セピク州アイタペ地区は高さ
10メートルの大津波に襲われました。死者は1,000人を超えている模様です。USGSの
速報による震源諸元は次の通りです。

  発生時刻        震央       深さ    マグニチュード
 08:49:15 UT    3.10°S  141.80°E   33 km    7.0 (Ms)

● データ処理: IRIS-DMCのデータを地震研究所の準リアルタイムサービス (gopher)
 により収集しました。解析には11地点の広帯域地震計記録(P波上下動)を用いまし
た。波形は比較的単純で、小さい初期破壊のあと、約20秒間の単発破壊です。

●結果:解析結果を図1に示します。主な震源パラメータは以下のとおりです。

 走向、傾斜、すべり角(全体) =  (299, 88, 95) /(53, 6, 24)
 地震モーメント     Mo  =  4.2 x10**19 Nm  (Mw = 7.0)
  破壊継続時間      T  = 20 s 
 深さ(Centroid)      H = 15 ± 5 km
 断層面積         S = 40x15 km**2
 くいちがい        D = Mo/μS = 1.8 m   (μ=40 GPa)
 応力降下         Δσ = 2.5Mo/S**1.5 = 7.1 MPa

● 解釈その他:応力降下はやや高めでプレート内部地震の様相を示します。震源は
かなり浅く求められます。メカニズム解はほぼ水平面と鉛直面にP波節面をもちます。
それぞれ、プレート境界の低角逆断層、プレート内部の鉛直断層に対応します。ど
ちらがより波形の一致がよいか比較してみましたが、今のところ波形だけからは判
定できません。津波の規模Mt(阿部によると7.5)がMs,Mwのいずれよりも大きいこ
とを考えると、鉛直の断層面の可能性が大きいのではないかと思われます。今後の
調査(地殻変動、余震など)が待たれます。
                           (文責:菊地・山中)


(付録)日本地震学会98年秋季大会で発表予定の予稿原稿