1998年7月17日パプアニューギニア地震(Ms7.1)の

        遠地実体波による震源過程

  菊地正幸・山中佳子・阿部勝征・森田裕一(東大地震研)

Source rupture process of the Papua New Guinea earthquake of

  July 17, 1998 inferred from teleseismic body waves

   Masayuki Kikuchi, Yoshiko Yamanaka, Katsuyuki Abe,

     and Yuichi Morita (ERI, Univ.Tokyo)


●はじめに
 7月17日夜、パプアニューギニア北西部沿岸でMs7.1の地震があり、西セピク州
アイタペ地区は高さ10メートルを超える大津波に襲われた。本研究では、遠地実体波
の波形インバージョンにより、この地震の震源過程を調べるとともに、地震の規模の
割に大きな津波を引き起こした原因について検討する。

●データ処理
 震源情報としてNEICのQEDによる以下の震源諸元を用いた。

  発生時刻         震央     深さ    マグニチュード
 08:49:16 UT    2.93°S  141.80°E   33 km    7.1 (Ms)

また、IRIS-DMCのデータを地震研究所の準リアルタイムサービス (gopher) により
収集した。解析には11地点の広帯域地震計記録(P波上下動)を用いた。波形は比較
的単純で、小さい初期破壊の約10秒後に主破壊と思われる相が現われる。
●波形インバージョン
 はじめに、点震源を仮定した波形インバージョンにより、最適の震源メカニズム
解を求めた。ほぼ水平面と鉛直面をP波節面とする解が得られた。
 次に、メカニズムを固定した波形インバージョンにより、サブイベントの時空分
布を求めた。2つのP波節面のどちらを断層面としても波形の一致は同程度であり、
優劣を判定できなかった。主な震源パラメータは以下の通りである。

  走向、傾斜、すべり角   =  (301, 85, 98) /(63, 9, 32)
  地震モーメント      Mo =  4.2 e19 Nm  (Mw = 7.0)
   破壊継続時間(主破壊)  T = 20 s 
  深さ(Centroid) H = 15 ± 5 km
  断層面積     S = 40x15 km**2
  くいちがい    D = Mo/μS = 1.8〜2.3 m   (μ=30〜40 GPa)
  応力降下   Δσ = 2.5Mo/S**1.5 = 7.1 MPa
●津波データ
 遠地の津波の高さH[m]とMwの経験式に基づく津波マグニチュードMtは次式で定義
される[Abe, JGR,1979]。
     Mt= log H+B (B:観測点と震源の組み合わせに関係した定数)
日本-グアム・マリアナ方向の組に対してはB=8.4である。今回の地震で日本の太平
洋沿岸で観測された津波の高さから、Mt=7.5 が得られる。
●気象庁マグニチュード
 地震研の海半球センターは97年12月に震源から約200km西方のジャヤプラ(JAY)に
広帯域地震計(STS-1)を設置した。この記録を基に、Wiechert地震計(周期5秒、
減衰定数0.2)の記録を合成し、気象庁マグニチュードを計算すると、Mj=7.1とな
る。したがってMs≒Mw≒Mjである。
●地表のSingle-force源の可能性
 P波の押し引き分布は水平南北方向のSingle-forceによっても説明できる。一方、
S波については、Transverse成分はほぼダブルカップルと同等であるが、Radial成分
は出射角が45°より大きいところで異なってくる。また、depth-phaseの有無による
波形の違いもある。これらを考慮して理論波形と観測波形を比較したところ、この
地震にSingle-forceが関与した可能性は低いと判断される。 
●結論
 津波地震の原因として、(1) ゆっくり地震、(2) 海底地滑り、(3) 極浅縦ずれ断
層、などが考えられる。我々の解析結果は、今回のMs7.1の地震が(1)または(2)で
ある可能性は低く、(3)の可能性が高いことを示している。ただし、この地震に誘
発されて局所的な非地震性の海底地滑りが起こった可能性を否定するものではない。