winの験測情報は /dat/picks/man/9802 等の月別のディレクトリに、 1地震1ファイルの形で入っています。これを pickファイルと呼んでいます。 そのファイル名は、ふつうもっとも早いP時刻を使って、YYMMDD.hhmmss.sssの 形で作られます(win(1W))。
pickファイルは、
の3つの部分からなります。(1)〜(3)を直接書きだすのはwinですが、(2)の 部分はwinが震源決定をするたびにwinが(1)から生成してhypomhに与える もののコピー、(3)はhypomhからの出力のコピーです。
例は次のとおりです。
#p 980217.140302 Nikko hagiwara #p 98 02 17 14 02 42 #p 0200 0 20 752 20 758 +1 #p 0200 3 20 800 20 800 -1 2.79e-06 #p 0201 1 21 911 21 923 +0 #p 0206 0 21 126 21 138 +0 #p 0206 3 22 520 22 520 -1 1.41e-06 #p 0208 1 22 494 22 512 +0 #p 020C 0 20 899 20 905 +1 #p 020C 3 20 990 20 990 -1 2.39e-06 #p 020E 1 22 126 22 138 +0 #p 0218 0 20 831 20 843 +0 #p 0218 3 20 890 20 890 -1 2.35e-06 #p 021A 1 22 126 22 138 +0 #p 0234 0 20 862 20 868 +1 #p 0234 3 20 910 20 910 -1 5.28e-06 #s 98/02/17 14:03 98/02/17 14:18:04 #s ASO U 2.755 0.003 3.917 0.006 0.0 2.79e-06 36.64934 139.45970 720 #s KBH . 2.837 0.006 4.132 0.006 0.0 2.35e-06 36.65450 139.52824 750 #s NIK U 2.865 0.003 0.000 0.000 0.0 5.28e-06 36.62144 139.49072 1310 #s KRO U 2.902 0.003 4.132 0.006 0.0 2.39e-06 36.68685 139.49794 865 #s GNZ . 3.132 0.006 4.503 0.009 0.0 1.41e-06 36.65316 139.41226 880 #s #f 98 2 17 14 3 1.174 36.64721 139.48737 8.048 0.7 #f CONV 0.000 0.181 0.130 0.275 #f 0.017 -0.003 0.004 0.033 0.002 0.076 #f 36.600 100.0 139.500 100.0 30.000 30.0 #f 5 ERI 5 ( 18.0% ) 4 ( 82.0% ) 3 ( 0.0% ) #f ASO U 2.5 275.8 163.3 15.0 2.75 0.02 0.00 3.92 0.06 0.00 0.279E-05 0.6 #f KBH . 3.7 77.3 155.6 21.9 2.84 0.02 0.00 4.13 0.06 0.09 0.235E-05 0.6 #f NIK U 2.9 174.0 162.0 16.2 2.87 0.02 -0.01 0.00 0.00 0.00 0.528E-05 1.0 #f KRO U 4.5 12.1 151.5 25.4 2.90 0.02 -0.01 4.13 0.06 -0.04 0.239E-05 0.6 #f GNZ . 6.7 275.7 140.5 34.9 3.13 0.02 0.02 4.50 0.07 -0.03 0.141E-05 0.5 #f 0.01 0.05
(1)#pで始まる行
1行目には空白で区切られた3つの項目があって、それぞれ
(a)波形ファイルの名前 (b)験測者が付けたラベル(メモ) (c)験測者名
です。(b)は、ない場合はそれぞれピリオド "." になります。pickファイルは、 かならず1つの波形ファイルに属します。winは、ある波形ファイルを開いた ときに、それに属するpickファイルを見つける方法として、まず波形ファイル の含む時間の中に含まれる名前を持つpickファイルを見つけ、さらにその 1行目を読んで、上の(a)が波形ファイル名と一致するかどうか確認します。 2行目は、波形ファイルの先頭の時刻の年月日時分秒です。この時刻が 3行目以降に書かれている相対時刻の基準になります。 3行目からは各行が1つの読み取り値(P,S,F,最大振幅のいずれか)を 表しています。"#p"の次の4桁はチャネル番号、次の数字は 0,1,2,3 で それぞれ P, S, F, 最大振幅の読み取り値であることを表します。 次に2桁と3桁の数字が2組ありますが、これは読み取り値の範囲の 始めと終わりの時刻を、波形ファイルの先頭から数えた秒数で、 それぞれ秒とミリ秒で表したものです。たとえば
の場合、チャネル0200で読み取ったP時刻の値は先頭から 20.752秒〜20.758秒 の範囲です。次の-2,-1,0,+1の数字は、Pの読み取り値の場合は初動極性を -1,+1,0(読まれてない)で表し、最大振幅の場合は、-2,-1,0,+1 がそれぞれ 単位 m/s/s, m/s, m, "単位なし"を表します。読み取り値が最大振幅の場合 だけ、もう一つ右に最大振幅値が入ります。
なお、ここで「波形ファイルの先頭から数えた秒数」は、 2001.7以前の版のwinで作られた場合、 波形ファイル中に 実際に含まれる秒ブロックの数で数えられます。波形ファイル中で特定の 秒がまるまる(全チャネル)抜けている場合、抜けた秒は「先頭から数えた秒数」 の勘定に入らなくなり、「先頭から数えた秒数」と「先頭との時間差(秒差)」は 一致しません。 このため、波形ファイルがないと、pickファイルの"#p"行の値だけから正確に 読み取り値の時刻を求めることはできません。 2001.7以降の版のwinで作られてものは、「先頭からの秒数」は正しく先頭時 刻との時間差を表しますので、pickファイルの"#p"行の値だけから正確に 読み取り値の時刻を求めることが出来ます(win -x などでそのまま使えます)。
(2)#sで始まる行
1行目は2行目以降の秒単位の到着時刻データの基準になる年〜分、および
右側にこのファイル(hypomhへの入力ファイル)を作った時刻が入ります。
2行目からは各行が1つの観測点の験測データで、左から、観測点コード、
P初動極性(データなしは ".")、P時刻(s)、P精度(s)、S時刻(s)、S精度(s)、
F-P時間(s)、最大振幅(m/sのときのみ書きだされる)、観測点緯度(度)、
経度(度)、高度(m)、Pの観測点補正(s)、Sの観測点補正(s)です。
PとSの観測点補正は、この値が到着時刻に加えらるもので、0のときには
省略されます。最後に空行("#s"のみの行)が1行あります。
(3)#fで始まる行
1行目は震源時・緯度(度)、経度(度)、深さ(km)・マグニチュード、
2行目は診断("CONV"・"NOCN"・"DEEP"・"AIRF"ど)と結果の誤差
(秒および km単位)です。ただし震源時の誤差は常に0で意味がありません。
3行目は誤差共分散行列の6つの成分で、東をx、南をy、下をzに
とった km 単位の座標系で、Cxx,Cxy,Cxz,Cyy,Cyz,Czzの順です。
従って2行目の緯度・経度・深さの誤差の自乗が、それぞれ Cyy,Cxx,Czzに
なっているはずです。4行目は与えた初期震源の位置およびその不確定さ
で、緯度(度)・緯度の不確定さ(km)・経度(度)・経度の不確定さ(km)・
深さ(km)・深さの不確定さ(km)です。5行目は左から、観測点数、速度構造
モデル名、P時刻データの数、S時刻データの数、初期値データの数(これは
初期震源の座標なので常に3)で、括弧内はそれぞれのデータからの寄与の
割合がパーセントで示されています(ただしhypomhの作者によると
P,Sそれぞれのパーセント表示は問題があって、両者の和は信用できる、
とのこと)。
6行目からは各観測点ごとの結果が観測点数だけあって、各行の内容は、
左から、観測点コード・P極性・震央距離(km)・観測点方位(北から東回り
(度))・射出角(下から(度))・入射角(下から(度))・観測点補正後の
P時刻(s)・P精度(s)・P時刻のO-C(s)・観測点補正後のS時刻(s)・S精度(s)・
S時刻のO-C(s)・最大振幅(m/s)・マグニチュードです。ただし、最大振幅
データがなくてF-P時間データがある場合には、最大振幅の代わりに
F-P時間(s)が表示されます。F-P時間の場合は一般に値が1以上になります
ので、値からこの判別は容易です。マグニチュードは、最大振幅データがある
場合は渡辺(1971)の式を、F-P時間データしかない場合は津村(1967)の式を、
それぞれ使って求められていて、値"9.9"はマグニチュード未決定の意味です。
最後の行は、P時刻のO-CとS時刻のO-Cのそれぞれの標準偏差(s)です。
震源がよく決まった場合は、各観測点のO-C時間が精度と同程度以下に
なっているはずです。