YCU地震学レポートNo.56 Jun.11, 96
6月 8日 中国核実験(mb6.0)
6月10日 アリューシャンの地震(Ms7.7)の暫定解
1。6月8日 中国核実験による地震波の解析
中国は日本時間で6月8日12時56分,ウイグル自治区ロプノル実験場で核実験
を行ないました。昨年8月17日以来のことです。報道によると,中国はもう一度行
ったのち実験を終結するとか。日本政府の対応を含め,何ともやりきれないコメント
が続きます。
核爆発による地震波は南関東の広帯域地震計ネットでも観測されました(図1)。
これを前回と比較すると(YCUレポート#44),爆発規模はほぼ前回並みかやや
大きめであることがわかります。ここではIRISの遠地実体波記録の解析結果を報
告しておきます。基にしたUSGSの震源情報は次の通りです。
発震時刻 震 央 深さ mb
96/06/08 02:55:57 41.62N 88.65E 0 km 6.0
前回同様,0.4 Hzより高周波の変位波形を用いてインバージョンを行ないました。
結果を図2に示します。モーメントテンソルの全成分は次の通りです。
Mij =11.8 3.3 -0.1 [x 10**16 Nm]
3.3 4.9 0.2
-0.1 0.2 1.5 (x1,x2,x3)=(N,E,Down)
主値 M1,2,3,スカラーモーメントMo,等方成分Iの値は
M1,2,3= 13.2, 3.6, 1.5 [x10**16 Nm]
Mo=(M1-M3)/2=5.8x10**16 Nm
I=6.1x10**16 Nm
です。
参考までに,前回(95年8月17日)のモーメントテンソルは次の通りです。
Mij = 10.3 2.6 -1.5 [x1016 Nm]
2.6 1.1 -1.5
-1.5 -1.5 2.5
M11成分(南北引張)が大きいことなど大変よく似ています。また,これまでの一連
の核実験について,mb,Mo,Iの値をまとめると次のようになります。Iの値と
核実験の規模がよく対応していること,中国の核実験の規模(未発表)がかなり大き
かったこと(おそらく200kトン程度)がわかります。
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中国 France France France France 中国
95/08/17 95/09/05 95/10/01 95/10/27 96/01/27 96/06/08
mb 6.1 4.8 5.5 5.5 5.4 6.0
Mo[x10**16Nm] 5.6 0.45 2.6 1.4 2.5 5.8
I [x10**16Nm] 4.6 0.36 3.0 2.3 3.0 6.1
規模[kトン] ? <20 <110 <60 <120 ?
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2。6月10日 アリューシャンの地震(Ms7.7)
日本時間で6月10日13時,アリューシャンでMs7.7の大きな地震がありま
した。この地震に対し気象庁は太平洋沿岸に津波注意報を発しました。その後の観測
で潮位の変動は観測されなかった模様です。USGSの震源情報はつぎの通りです。
発震時刻 震 央 深さ Ms
96/06/10 04:03:34 UT 51.4N 177.8W 33 km 7.7
米国IRIS(地震学研究連合)の広帯域地震記録を用いた解析結果を図3に示し
ます。断層面を固定してサブイベントの時空間分布を求めたものです。主な震源パラ
メタは以下の通りです。
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メカニズム (走向,傾斜,すべり角)=(260,27,105):低角逆断層
モーメント Mo= 4.1x10**20 Nm
マグニチュード Mw= 7.7
破壊伝播 東西にそれぞれ約 50km
深さ範囲 H=45 ± 10 km
断層面積 S=100km x 50km
破壊継続時間 T= 45 s
ずれの大きさ D=Mo/μS= 1.2 m (μ= 70 GPa)
応力降下 Δσ=2.5Mo/S**1.5= 2.9 MPa (29bar)
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震源メカニズム及び低応力降下からみて,典型的なプレート間地震です。しかし断層
は海底に達しなかったと考えられます。
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最近,IRISからのデータ転送が極端に遅くなりました。筆者(MK)は,少し
でも早くと思って,まず東大計算機センターに集め,そのご横浜市立大に転送してい
るのですが,最近は第1段階ですでに数時間を要する始末です。何とかならないもの
でしょうか。