YCU地震学レポートNo.54 May.14,96
5月8日 房総半島沖の地震の近地実体波解析と
横浜市高密度強震計ネットワークの紹介
5月に入って何個か有感地震が続きました。いずれもM4クラスの小地震ですが,
今回は横浜市の高密度強震計ネットの紹介をかねて,このうちの1つについて,
広帯域地震計データの解析結果と強震計ネットで得られたデータを報告します。
解析した地震の気象庁による諸元は次の通りです。
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発生時刻: 96/05/08 13:26
震央: 35.0°N 140.3°E 深さ:110 km
マグニチュード Mj 4.4
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用いたデータは南関東地方の広帯域地震計観測網の4点の波形記録(防災科学技術
研究所 FREESIA の TYM を含む)です。これに近地深発地震用のインバージョン法
(Kikuchi & Ishida, BSSA, 1993)を適用しました。図1に結果を示します。
主な震源パラメタは次の通りです。
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(走向,傾斜,すべり角)=(93, 28, -7) / (190, 87, -118)
モーメント Mo= 6.2 x10**15 Nm ( Mw= 4.5 )
破壊継続時間 T = 0.45 s
断層面積 S = 1.8 km x 0.9 km = 1.62x10**6 m*m
ずれの大きさ D = Mo/μS = 0.05 m (μ= 77 GPa )
応力降下 Δσ=2.5 Mo/S**1.5= 7.5 MPa (75 bar)
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震源の位置から判断して,潜り込む太平洋プレート内の Down-dip extension 型の
メカニズム(手書き図示)です。この付近の太平洋プレート上面近くでよく見られる
Down-dip compression型とは明らかに違っています。
2重深発地震面の下面側のタイプでしょうか?
横浜市では,市内各所に高密度(150ヶ所/400平方km)で強震計を配置し,大地震
時の被害の正確かつ迅速把握を図るとともに,日常的にも地盤特性のきめ細かな把握
や市民への震度情報サービスなどを行おうとしています。その第1期分が昨年度完成
し,現在,市内18ヶ所で試験稼動を行っています。
上記の地震では,9ヶ所でトリガーレベル(= 2 gal)を越え,早期情報(最大加
速度,震度,卓越周期,SI値)がほぼ2分以内に,さらにその後,波形データが
センター(市大)に送られてきました。図2(手書きコピー)にその例を示します。
空白の丸はトリガーがかからなかった地点です。これらの点では,最大加速度が
2 gal以下であったことになります。実際,YCU(横浜市大)では最大加速度は
1.2 galでした。このことから,場所によって最大加速度がほぼ5倍ほど異なること
がわかります。また,波形から,揺れの特性が場所によってかなり異なることが窺え
ます。今後この種のデータが有感地震ごとに収集されます。
まずは,ご紹介方々。