YCU地震学レポートNo.52                                      Feb.27, 96

       2月21日  ペルー沖の地震(Ms6.7?)の遠地実体波解析


日本時間2月21日21:51にペルーで発生した地震では,22日夕方から夜に かけて日本の太平洋沿岸に津波注意報が出されました。注意報の妥当性はともかくと して,この地震の震源についてよくわからない点があります。ハーバード大学のCM T解速報には,わざわざ”この地震の破壊過程は複雑である”旨の但し書きが付いて いました。 USGSの震源速報はつぎの通りです。 ---------------------------------------------------- 発震時刻 震 央 深さ Ms 96/02/21 12:51:04 UT 9.70S 79.70W 33 km 6.7 ---------------------------------------------------- 米国IRIS(地震学研究連合)の遠地実体波(P波,SH波)22個を用いて解 析を行いました。 初めに,点震源を仮定してメカニズムと震源の深さを検討しました。この段階で, 深さ60km付近に収束の良い解が得られました。ハーバードCMTともUSGSの 速報とも相容れないのですが,捨てるに忍びない解です。これについては,もし何ら かの裏付け情報があれば後日再検討してみます。もう1つの解は局所的な最小自乗解 で,深さ19kmに求まりました。ここではこちらの解のみを紹介します。なお,ど ちらもほとんど同じメカニズム解を示しますが,得られる地震モーメントMoは 2,3倍異なります(浅い震源のMoが大きい)。 次に,メカニズムと深さを固定し,走向方向に20km間隔のグリッドを置き, 各点のモーメント速度を求めました。こうして得られた結果を図1に示します。 また主な震源パラメタは以下の通りです。 ------------------------------------------------------------------ メカニズム (走向,傾斜,すべり角)=(18,14,122)/(165,79,83) モーメント Mo= 1.5 x10**20 Nm マグニチュード Mw= 7.4 破壊伝播 北から南へ約 60km 深さ H=19 km 断層面積 S=60km x 30km=1.8x10**9 m*m 破壊継続時間 T=36 s ずれの大きさ D=Mo/μS= 1.3 m (μ= 64 GPa) 応力降下 Δσ=2.5Mo/S**1.5= 4.9 MPa (49bar) ------------------------------------------------------------------ メカニズムは典型的なプレート間地震を示しますが,応力降下はやや大きめです。 また,表面波マグニチュードMs6.7が本当であるとすると,MsとMwのギャップ は有意に大きいように思われます。しかし一方で,破壊継続時間は 40s足らずですので, いわゆる”津波地震”とか”ゆっくり地震”というものでもなさそうです。今のところ, Msの再検討待ちです。