YCU地震学レポートNo.49 Nov. 27,95
11月12日 東京中部の地震(Mj4.5)
11月22日 エジプトの地震(Ms7.2)
1。東京中部の地震
11月12日朝早く,東京中部の深さ50kmで小さな地震がありました。気象庁
の地震速報は次の通りです。
発震時刻 震 央 深さ Mj
95/11/12 06:02 JT 35.69N 139.48E 47 km 4.5
この震源はフィリピン海プレートの上面(Ishidaによる)よりやや深いところに位置し
ます。
関東地方では,太平洋プレート内の地震はよく起こり,その多くは傾斜方向圧縮型
(down-dip compression)のメカニズムを持つことがわかっています。これに対し,
フィリピン海プレート内の地震はあまり多くなく,そのメカニズムもよく分かってい
ないように思われます。そこで,少し丁寧に,今回の地震を調べてみました。
用いた記録は南関東地方7地点の広帯域実体波です。図1の下側に10秒間の波形
を示します(立ち上がり時刻は任意)。初動部の1秒間弱が震源時間関数を表してい
ます。良く見ると,小さい地震ながら,2,3個の小破壊から成る多重震源の様相を
呈しています。解析結果を図1左側に示します。ほぼ同じ型(down-dip compression
の逆断層)の2つの小破壊が得られました。
ここではさらに,2つの位置関係も調べました。その結果,破壊がほぼ水平・北西
方向に進んだことがわかりました。図1の右上側に観測波形(上)と理論波形(下)
を示します。参考までに,震源の移動を考慮しない場合の理論波形を細線で描いてあ
ります。破壊がほぼ水平に進んだということは,断層面が「南落ち緩傾斜の面」であ
ることを示唆しています。言い換えれば,今回の地震は「フィリピン海プレート内の
低角逆断層」ということになります(挿絵参照)。これについて何かコメントを頂け
れば幸いです。
主な震源パラメターは次の通りです。
メカニズム 時間 モーメント Mw 継続時間 深さ
(φ,δ,λ) Mo T
#1 (55,21,82) 0 - 0.35 s 1.5 x10**15 Nm 4.0 0.35 s 47 km
#2 (51,25,80) 0.20-0.50 s 3.5 4.3 0.30 s 47 km
----------------------------------------------------------------------
Total (52,23,81) 5.0 x10**15 Nm 4.4 0.50 s 47 km
2。エジプトの地震
11月22日朝早く(現地時間),エジプトのアカバ湾でMs7.2の地震があり
ました。規模および震源の浅さからみて,相当の被害が予想されたのですが,その後
の新聞テレビにはほとんどとりあげられませんでした。人の住んでいないところだっ
たのでしょうか。
USGS(アメリカ地質調査所)の震源情報は次の通りです。
発震時刻 震 央 深さ MSs
95/11/22 04:15:12 UT 28.54N 34.75E 10 km 7.2
今回はIRISの広帯域地震記録のうち,20Hzサンプルの遠地P波を用いてイ
ンバージョンを行ないました。波形を下見した段階で,小さな初期破壊の存在が確か
められ,それを調べるには,通常の1Hzサンプルのデータは粗過ぎたからです。
解析結果を図2に示します。異なるメカニズムを持った2つのサブイベントが得ら
れました。初めの破壊は,かなりの正断層成分を伴った横ずれ型,2つ目はほとんど
純粋な横ずれ型で,いずれも南北ないし南南東−北北西方向の圧縮軸を持ちます。ま
た,破壊伝播の方向性がたいへん顕著です。初期破壊点から北北東へ35−40km
進んだと推定されます。したがって震源断層は北北東に走向を持つ左横ずれ型です。
主な震源パラメターは次の通りです。念のため,ハーバード大学のCMT解,US
GS解の間には多少の違いがあることを付け加えておきます。
メカニズム 時間 モーメント Mw 継続時間 深さ
(φ,δ,λ) Mo T
#1 (219,69,-26) 0 - 7.5 s 0.9 x10**19 Nm 6.6 7.5 s 13 km
#2 (201,84, -4) 4.0-16.0 s 5.2 7.1 12.0 s 13 km
----------------------------------------------------------------------
Total (203,81, -7) 5.8 x10**19 Nm 7.1 16.0 s 13 km
======================================================================
HRV-CMT (203,40, -6) 7.7 x10**19 Nm 7.2 15 km
USGS (192,61, 10) 3.1 x10**19 Nm 7.0 20 km
全体に対して,断層面積S,すべり量D,応力降下Δσを見積ると次のようになり
ます。(剛性率μ=3x10**10 Pa)
S=40x15=600 km**2
D=Mo/μS=3.2 m
Δσ=2.5 Mo/S**1.5=9.9 MPa
応力降下は典型的な内陸型地震の値を示しています。(MK)