YCU地震学レポートNo.38                            Jan.21,95
 
       1月17日兵庫県南部地震のメカニズム(改訂版)


その後,可能な限りの実体波データを用いて解析し直しました。得られた結 果は基本的に前回の速報と同じですが,解釈に違いがあります(とくに,断層 面積とすべり量の見積は全く異なります)。 まず全体的な震源パラメタは次の通りです。 メカニズム (走向,傾斜,すべり角)=(233,85,165) N233°E/N53°Eを走向とすると右横ずれ型断層 地震モーメント Mo=2.5x10^26 dyne-cm (Mw=6.9) 主破壊の破壊継続時間 T=11s 主破壊はほぼ2つのサブイベントから成っていることがわかりますが,全方 位の観測記録の基本的な相を説明するためには,もう1つのサブイベントが必 要です。この3つめのサブイベントの位置は前回求めた2つのサブイベントの 真ん中に求まります(図abc)。 メカニズムはあまりあてになりません。 詳細は次の通りです。 # 走向,傾斜,すべり角 モーメント 時間 破壊開始点 1 (229,86,171) 1.81x10^26 (Mw 6.8) 0-6s 0 km 2 (214,66,136) 0.30x10^26 (Mw 6.3) 4-9s 10-15 km 北東 3 ( 70,85,-162) 0.59x10^26 (Mw 6.4) 6-11s 15-20 km 北東 前回は余震分布が全くわからないまま,一方向伝播モデルを仮定したのです が,余震分布と本震の震央から推定すると,はじめの破壊については両方向伝 播モデルが適当と思われますので,破壊面積とすべり量の見積を次のように修 正しました。(なお剛性率μ=3x10^11dyne/cm^2,破壊速度v=3.0km/s,縦横比 L/W=2 を仮定しています) # 破壊伝播時間 断層面積 すべり量 応力降下 1 4s 24x12 km^2 2.1m 93 bar 2 3 9x4.5 2.5 130 3 4 12x6 2.7 242 断層長の総和は 45km になりますが,オーバーラップがありますので,正味の 総延長は L=12+(15〜20)+12=39〜44 km 程度と推定されます。 なお破壊速度 3km/sはかなり大きめの値です。通常の2.3km/sを用いますと, 面積は約 0.6倍に,すべり量は約 1.7倍,応力降下は2.2倍になります。 いろいろ調査を進めておられる方々の参考になれば幸いです。 (MK)