YCU地震学レポートNo.30 Jun 10,94
5月27日 東京東部 6月2日 インドネシア・ジャワ島
6月9日 ボリビア深発地震
このところ,国内外で次々と地震が起こり,なかなかレポートができあがり
ません。先日はついに,世紀の巨大深発地震まで起こってしまいました。とり
あえず3個の地震について解析結果を報告します。このほか,5月24日,6
月5日の台湾東部の地震,6月5日の駿河湾の地震も調べてあります。
1。6月9日のボリビア深発巨大地震
広帯域地震計(STS−2型)のモニター記録を見ると,表面波らしきもの
が大きくでていたので,”これは浅い大地震だろう”と学生に話していたとこ
ろ,まもなくUSGSの震源速報(QED)が入り,これが世紀の巨大深発地
震であることを知りました。
さっそく,IRIS−DMCより波形データをとりよせて,P波の変位波形
を出力してみました。まさに待ちに待った「巨大地震の震源時間関数」そのも
のでした!
しばらくは,これに手を加えるのがもったいないような気がして,何もせず
に,ただこの変位波形をしげしげと眺めていました。その間,USGS解,ミ
シガン大学の解,ハーバード大学の解,さらには,USGSの修正解などが
e-mailで次々に送られてきました。いずれこの地震は,地球内部構造の研究の
みならず,震源の研究にも大きな影響を及ぼすに違いありません。
震源過程の観点からは,とくに初期破壊の過程がおもしろそうです。初めの
10秒間は,小粒の地震が3個ほど連発しているのが見えます。良く見ると,
これらの小地震は互いに隔離されておらず,かすかに(ゆるやかに)連結され
ている(断層運動が継続している)ことがわかります。もっとも,この3連発
は,小粒とはいっても,M7クラスのオンパレードです。
手前みそな解釈をすると,このM7地震が合体して,一回り大きな長さスケ
ールの破壊へと発展したことが推測されます。しかし,この初期破壊過程につ
いては別の解釈も成り立つかもしれません。たとえば「破壊核の形成過程」と
か,あるいは Self-Organized Criticality の立場からも意義付けられるか
も知れません。
ともかく,この地震の震源過程は,モーメントや破壊継続時間などといった
単純なパラメターだけでは到底満足されるものではなく,じっくりと腰をすえ
てとりかかるべき研究対象と思われます。
当方の暫定解は以下の通りです。はじめの10秒間に3個のサブイベントが
あります(図1の左下)。3番目のメカニズムだけが少し異なっています。そ
の後の主破壊では5,6個の破壊クラスターがあり,それぞれのクラスターは
数個のサブイベントから成ります(図1上&右部分)。震源パラメターの詳細
を表1に示します。メカニズムと全地震モーメントについてはハーバードのC
MT解とほぼ同じです。
2。6月2日のジャワ島の地震
この地震では津波による死者が200人を越えました。(ボリビアの地震が
なければ,今回の中心テーマとなるべき地震でした。)TVニュースによると
現地観測によるマグニチュードは5.9とのこと。観測上の問題はあるにして
も,「地震の揺れは大したことなかった」ということでしょうか。一方,表面
波マグニチュードMsは7.2。そこで,モーメントマグニチュードMwはど
の程度であったかが気になります。津波との関連では,震源の深さ,メカニズ
ムも重要です。
QED及びハーバード大学のCMT解は次の通りです。
発震時 94/06/02 18:17:37 UT 震央 10.2S 113.2E
深さh shallow (33km) Ms 7.2
Mo=3.5x10**27 dyne-cm Mw=7.6
メカニズム (φ,δ,λ)=(284,12,99) h=15kmに固定
当方で得た解を図2に示します。主なパラメターは次の通りです。
メカニズム (φ,δ,λ)=(266,9,78) h=27km
Mo=3.6x10**27 dyne-cm Mw=7.6
継続時間τ 36s
地震規模(モーメント)は,昨年の北海道南西沖地震クラスであることがわか
ります。破壊継続時間はこの規模にとってごく普通の値であり,ゆっくり地震
の兆候はありません。しいて言えば,ゆっくりではないが,「なめらかな」破
壊伝播で特徴付けられそうです。現地のマグニチュードがかなり小さかったこ
とと関係あるかも知れません。
3。5月27日の東京都東部の地震
5月27日深夜に起こった地震です。東京で震度�靴魑�録しました。私(於
横浜)は全く気が付かなかったのですが,TVニュース速報で知りました。震
源地は東京都東部で,防災科学技術研による震源速報は次の通りです。
Origin Time Lat. Lon. Depth Mag.
94/05/27 23:53:40.3 35.702N 139.683E 29.6km 4.1
波形解析にはTOK,TKO,CHUの記録(それぞれ1秒間)を用いまし
た。結果を図3に示します。主な震源パラメタは次の通りです。
走向 傾斜 すべり角 Mo Mw 継続時間 深さ
dyne-cm
275 10 115 1.8x10**22 4.1 0.15 s 30 km
メカニズムは低角逆断層型です。これと震源位置を考慮すると,この地震は関
東大地震の断層面の端付近で起こったプレート境界地震であろうと推測されま
す。類似の地震が92年11月19日に起こっています(YCUレポート#1
8参照)。前回同様,今回も強震計記録を集録しました。図4に4地点の記録
をプロットしてあります。TOKの記録(気象研)は地下285mの井戸に設
置された強震計のデータです。Gain がわからなかったので,図のpp値はあ
てになりません。なお,地表のSTS−1型記録はS波到着後,振リ切れてし
まったようです。
92年の地震とそれ程離れていないにもかかわらず,大分波形が異なってい
ます。たとえば,YCUのP波初動と1秒後の相,CHUの水平動に見られる
P波の2秒後の相は何なのか,ちょっと興味をひかれます。
<余禄>
#28にそれとなくほのめかしたのですが,横浜市立大学では(といいまし
ても,実は3名だけですが),このたび神津島で地震観測をすることにしまし
た。村役場の大変ありがたいご配慮によって場所も決まり,来週中に設置の予
定です。手持のセンサーは2成分しかなかったのですが,なんとかもう1成分
を調達(前借り)しました。お金のなさを痛感したこのごろでした。(MK)