YCU地震学レポートNo.21                                 Mar.11,93

       新観測点=東海大学海洋学部(清水市)の開所のお知らせと
              3月7日静岡県の地震(M3.1)の解析        


1。新観測点の開所 このたび,広帯域地震計の新しい観測点SMZが稼働を開始しました。場所 は静岡県清水市にある東海大学海洋学部の校内です。今回はこれまでの観測点 と異なり,センサー(STS2と強震計)を地中に埋め込みました。温度変化 を避けるためです。この「埋め込み効果」はなかなかのものです。詳細につい ては春の学会で石原さんが発表します(予稿集の原稿をうしろに添付)。 この地震計の設置は,少なくとも4者の協力によって可能となりました。ま ず地震計とデータ収録装置は横浜市立大学所属,観測点に係わる工事や通信機 材は防災科学技術研究所の受け持ち,地震計を地中に埋め込むためのカプセル は名古屋大学製作(金は防災科技研),そしてもちろん場所は東海大学所属で す。海洋学部の根元謙次先生には,研究室の中にデータ収録装置等を置かせて もらっているのみならず,トラブル続きの設置作業では大変ご迷惑をかけまし た。先生の寛大なご配慮に感謝申し上げます。 清水観測点の諸元は以下の通りです。
位置 緯度34.987N 経度138.517E 標高 0m
観測点コード SMZ
テスト稼働開始 93/3/3 16:30より
センサー STS−2 & アカシ強震計(JEP−4AB)
   (特性についてはYCUレポートNo.1参照)
ダイヤルアップ方式採用(いずれ電話番号をお知らせします)
  かくして,南関東−東海地方のダイヤルアップ方式採用の広帯域地震観測網
は図1のような配置になりました。
  新観測点の詳細については,上述のように,来たる学会で発表しますが,こ
こではその予告編として,2,3の記録例を示します。まず感激的なこととし
て,長周期成分で地球潮汐が見えるほどの改善が得られました。もともとST
S2の地球潮汐帯域での感度はSTS1より1桁ほども小さく,これまでどの
観測点でも検出できませんでした。図2にULP(100sサンプル)の5日
間余りの記録を示します。比較のためYCUの記録も載せてあります(振幅の
スケールの違いに注意)。YCUの記録に見られる日変化はほとんど温度変化
によるものと思われます。
  図3は遠地地震(3月6日Santa Cruz Is.)の記録です。振幅,センスとも
他の観測点と調和的な記録がとれています。振幅から見て,SMZの地下構造
はYCUのそれと似たようなものと推測されます。

2。3月7日静岡県の地震の解析

  SMZ観測点が稼働を開始してから,”待望の地震”(MI氏談)が3月7
日に起こりました。防災科技研の震源情報はつぎの通りです。

    発震時  3/7  17:46:35.6
    震央    34.95N  138.26E
    深さ    19km    M3.1


震央とP波初動解を図4に示します。図の背景は,防災科技研による本年1月
6日から3月8日までの微小地震の震央です。
  図5はSMZのVBB記録3成分(地動変位に変換)です。また,図6には
この記録を用いて震源のインバージョンを行なった結果を示します。解Aは,
SMZの記録だけを用い,”横ずれ型断層”の制約条件をつけてインバージョ
ンを行なったものです。また,解Bは,質はかなり落ちますが,SGNとJI
Zの記録を付加して得られたものです。後者の場合,制約条件は”任意のダブ
ルカップル”です。震源パラメタは以下の通りです。NIEDのマグニチュー
ドよりかなり大きいMwが得られました。また,応力降下の目安としての Mo/
τ**3の値は,浅い地震としては,normalの範囲でした。

        メカニズム解     モーメント   Mw パルス幅  Mo/τ**3
      走向 傾斜 すべり角   Mo(dyn.cm)        τ(s)     e23 cgs
解A   289   90     0    2.6 e21      3.5   0.35     0.6 (normal)
解B   131   56    74    1.5 e21      3.4   0.30     0.6 (normal)