YCU地震学レポートNo.19                                 Jan.14,93

  1月10日〜 川  奈  崎  沖  の  群  発  地  震  
              = 解  析  と  記  録 =
            

1月10日未明(防災科技研のデータによると,2:40ごろ),突如,川 奈崎(伊東)沖で地震が群発し始めました。これまでのところ,1月10日 17:51のM4.0の地震を最大として,徐々に鎮静化しつつあるように見 えます。そこで,これまでに収録した記録や解析例を報告ようと思っていた 矢先,本日(14日)13:19に,また,大き目の地震がありました。 ともあれ,この段階で,簡単な中間報告をしておきます。  波形のインバージョンに先立って,まず,JIZ(中伊豆)とHKY(箱根 湯本)の記録を眺めてみました。図1にJIZの上下動と南北成分を時間順に ならべてあります。図1-a(93/1/10) 図1-b(93/1/11) 図1-c(93/1/12-14)。 これを見て分かるように,概ね,2種類に分類できます。それぞれのグループ の波形は,振幅を正規化すると,驚くほど良く一致しています。  このことから,おそらくは2種類の断層系が交互に活動していると思われま す。それぞれのグループの中から大きい地震をピックアップして,波形インバ ージョンをした結果が,図2〜6に示してあります。(解析結果をご覧下さい) 主な震源パラメタは表1の通りです。  グループの1つは,北西−南東方向の圧縮軸を持つ横ずれ断層(A型),他 のグループは東西方向の圧縮軸を持つ横ずれ断層(B型)です。前者はこの付 近のテクトニクな応力と調和的ですが,後者はかなり特殊な(局所的な)応力 系のように見えます。例えば,神津島付近の地震のメカニズムとほぼ逆センス です。  川奈崎沖では91年12月26日にも群発地震がありました。当方で収録し ていた記録を見てみたところ,例外なくB型グループの波形でした。したがっ て,この東西圧縮のメカニズムは,局所的とはいっても,それなりに理屈を持 ったメカニズムのようです。さて,どのように考えればよいのでしょうか。  なお,昨年暮れ(92年12月10日)に,近くでM4.0の地震がありま した。見るからに低応力降下の地震でした。解析してあったのですが,報告を 怠っていましたので,これについても今回,図と表を付けておきます。 ◆後記◆ しばらくごぶさたしていましたが,ダウンしていたわけではありません。昨 年暮れまでの分を1つの報告書(一般研究C科研費成果報告書[菊地・石田] )にまとめました。近日中に皆様にお送りします。(MK) 表1 No Date h:m 震 央 深さ M 出典 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 1 92/12/10 18:09 34.97N 139.16E 10km 4.0 NIED 2 93/01/10 17:51 34.94 139.17 10 4.0 NIED 3 01/11 01:36 - - - - 4 01/12 17:53 34.94 139.14 6 3.2 NIED 5 01/14 13:19 - - - - <解析結果> メカニズム Mo Mw τ Mo/τ**3 P軸 (str,dip,sl) dyn.cm s −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 1 (345,85,-19) 8.1e21 3.9 1.00 very low (0.1)     図2 2 (137,60,-10) 8.2e21 3.9 0.30 normal (3) B型 図3 3 (136,57,-12) 2.9e21 3.6 0.30 normal (0.8) B型 図4 4 (178,65,4) 1.1e21 3.3 0.25 normal (0.7) A型 図5 5 (127,54,-16) 5.4e21 3.8 0.20 high (7) B型 図6