YCU地震学レポートNo.15                                 Oct.7,92

          10月4日 伊  豆  大  島  東  部  の  地  震   及び
          
            VBBチャンネルに現れる 見  か  け  の  先  駆  波


10月4日(日曜日)朝、久しぶりに、地震らしい地震に出合いました。ニ ュース速報によると、震度�靴�館山、網代、震度�兇�横浜、東京など。さっそ くダイヤルアップで波形を眺めてみると、YCU(横浜市大)の水平動がずば 抜けて大きい。震源地はYCUの真下かもしれないと思っていたら、次のニュ ース速報で、震源地は伊豆大島近海、深さ40kmとのこと。一体、どんなメ カニズムの地震かと興味を持ちつつ、あくる日、記録を解析してみました。 インバージョンにあたっては防災科技研の震源情報(表1、図1)を参考に しました。震源はフィリピン海プレート内、相模トラフから少し潜り込んだ点 に位置します。また、同じ場所で、昨年12月15日に小さい地震が群発して います(予知連[防災科技研]資料)。

表1 防災科技研の震源情報
Dateh:m:s 震 央 深さ M
10/04/9210:13:24.0934.892N139.625E 23.7km4.2


  2つのサブイベントから成るとして波形インバージョンを行ないました。結
果を表2及び図2に示します。主破壊はほぼ東西、南北に走向を持つ横ずれ断
層型で、防災科技研のP波初動解(図1)とほどよい一致を示しています。Y
CUはちょうどこのP波節面(S波の腹)の近傍に位置します。2番目のサブ
イベントは走向の異なる横ずれ断層です。それぞれの応力降下はほぼ同じで、
浅い地震の平均的応力降下よりは高めです。また、TYMとHKYのパルス幅
から推測しますと、破壊は東から西へ伝播したと思われます。

表2 震源パラメタ
メカニズム
(str,dip,sl)
Mo
dyn.cm
Mw τ
 s
Mo/τ**3
  (*)
テクトニクス
  ( 87,89,175)1.4e224.00.40normal (2)PHS内
1 ( 89,87,171)1.1e22
0.30high (4)主破壊
2 (259,86,174)3.2e21
0.20high (4)副破壊
     注(*) 浅い地震では、Mo/τ**3=1e23 dyn.cm/s**3を基準としている。

 この地震のVBBチャンネルの記録をよく見ますと、P波初動の少し前に、
短周期の振動が現れています。実は、このような「先駆波」は他の地震(例え
ば2月2日の地震)記録にも現れており(図3)、もしかしたら初期破壊に関
する重要な情報を示すのではないか、とひそかに期待していました。ただ、モ
ニター用アナログ記録には(虫眼鏡で拡大しても)見えないということが、気
になっていました。
 データ収録装置の説明書によると、AD変換の直接的な出力は80Hzサン
プル(VSP)のデータであり、VBBやLPチャンネルのデータは、それか
らデジタル処理で得られます。そこで、今回、VBBチャンネルだけでなくV
SPチャンネルの記録も収集して、比較してみることにしました。
  図4にVSPとVBBのオリジナルの記録を示します。これを見てわかるよ
うに、VBB記録に現れていた「先駆波」は、全くの GHOSTでした(!)。図
3の「先駆波」も、今となってはチェックできませんが、GHOST の可能性大で
す。初期破壊の詳細を調べようとしている者にとって、このようなことは大変
ショックでした。
 いずれ、カンテラ社のData-Logger でどのようなデジタル変換が行なわれて
いるかを確かめた上で、よりましなプログラムの提供を要望するつもりです。
当面の対策として、重要な地震についてはVSPチャンネルの記録を吸上げる
ことを勧めます。