YCU地震学レポートNo.12 Jul.15,92 茨 城 沖 地 震 (6月1日) の 追 試 と フ ィ ジ ー 島 深 発 地 震 (7月11日) の 解 析
YCU地震学レポート No.10では、6月1日の茨城沖地震について、決定版 のないまま3通りの「解」を載せました。今回、東京大学地震研究所筑波山( TSK)のSTS記録が手に入り(坪井さんの厚意による)、これら3つの解 に最終的な判定を下すことができました。以下に、その結果を示します。 まず図1に、TSK1点のP波、SH波を使ったインバージョンの結果を示 します。得られた震源パラメタは次の通りです。 (strike,dip,slip) Mo Mw τ Mo/τ**3 (199,12,97) 1.6e24 dyn.cm 5.4 1.60s 0.4e24 dyn.cm/s**3 低角逆断層のメカニズムであり、レポート No.10の解aとほぼ一致します。 もちろん1点の記録では、まだかなりの任意性があります。そこで、前の3 つの解のそれぞれについて合成記録を作り、観測波形と比較してみました。 図2にその結果を示します。これを見ても、解aの優位性はゆるぎません(ち なみに、この解はY.Iによるものです)。 かくして、6月1日の茨城沖地震は太平洋プレートの潜り込みに伴うプレー ト間地震であるという解釈に落ち着きました。 今回の経験から、茨城県周辺の地震を解析するにあたっては、筑波の記録 が大変重要であることがわかりました。ここには地震関係の研究機関が多く あるのですから、何とか1日も早く、一般のユーザーにデータを提供するシ ステムを構築して欲しいものです。 今回は番外編として、7月11日のフィジー島の深発地震の解析結果を送り ます。”番外”というのは、我々のネットワーク外のデータを使った解析だか らです。YCUなどの変位波形を見ますと、3、4個のパルスから成り、全体 として継続時間が長く、大きな地震であることがうかがえます(図3)。久々 に見る深発のマルチプルショックです。QED情報は次の通りです。 震源:21.9 S 179.0 W h=390 km M=6.2 まず、DMCのgopherにより10点の遠地記録を収集しました。そこで、各 点のP波の上下動およびSH波を用いてインバージョンを行ないました。その 結果、3つのサブイベントから成るマルチプルが得られました(図4-1)、 (図4-2)。それぞれのサブイベントの震源パラメタは以下の通りです。 No 時間 メカニズム モーメント Mo/τ**3 1 1〜 9 s (41,80, -79) 2.1e26 dyn.cm 0.4e24 dyn.cm/s**3 2 6〜14 (32,77, -92) 2.9 0.6 3 10〜18 (41,90,-127) 2.7 0.5 Total (36,82, -74) 7.3e26 dyn.cm (Mw=7.2) この表からわかるように、3つのサブイベントはほぼ同じメカニズム、モーメ ント、パルス幅を持っています。また、Mo/τ**3の値は、この地震が、標準な いしやや低めの応力降下を伴っていることを示しています。 (M.K)