YCU地震学レポートNo.10 Jun.19,92
神津島近海 5月14日 6月15日
千葉 5月17日 5月29日
浦賀 5月20日 6月10日
茨城沖 6月 1日
東京西部 6月17日
レポートを出そうとすると次の地震が起こり、・・・ということで,なかな
か区切りがつきませんでした。今回は,上記の8つの地震の解析結果をまとめ
て報告します。このほか,鳥島近海の群発地震についても解析を行っています
が,これについては次回に報告します。
準リアルタイム処理で用いた震源情報は,以下の通りです。
No Date h:m 震 央 深さ M 情報源
1 5/14 7:31 34.24N 139.04E 神津島 23km 4.4 USGS
2 5/17 1:41 35.71N 140.27E 千葉 65km 4.6 USGS
3 5/20 17:24 35.2 N 139.8 E 浦賀水道 90km 4.6 JMA
4 5/29 2:58 35.69N 140.76E 銚子 46km 5.1 NIED
5 6/ 1 22:51 36.66N 141.32E 茨城沖 29km 5.9 NIED (M5.1 USGS)
6 6/10 8:00 35.21N 139.73E 浦賀水道 88km 4.1 NIED
7 6/15 10:46 34.17N 139.10E 神津島 5km 4.4 NIED
8 6/17 4:21 35.79N 139.42E 東京西部 54km 4.1 NIED
解析結果 (個々の結果については各Noをクリックして下さい)
メカニズム Mo Mw τ Mo/τ3 テクトニクス他
(str,dip,slip) dyn.cm sec
1 (139,63,-158) 1.0e23 4.6 1.5 low 東西tension
2 (224,30, 113) 8.0e21 3.9 0.35 very low EUR/PAC境界
3 (188,81, 95) 1.3e23 4.7 0.30 very high PAC内
4 (110,18, 19) 8.1e23 5.2 1.8 very low EUR/PAC境界
5a (162, 9, 41) 2.3e24 5.5 ? EUR内?
b ( 94,55, -27) 1.1e24 5.3 2〜5 ?
( 59,67, 123) <== NIED 初動匐峠渮
6 (102,20, 173) 1.8e22 4.1 0.50 very low PAC内
7 (139,85, 171) 1.8e23 4.8 < 3 low 東西tension
8 ( 43,72, -93) 1.5e22 4.1 0.25 normal PHS内?
解説
今回解析した地震のうち,怪しいのが2つあります。
1つは,6月1日の茨城沖の地震。やや長周期成分についての解(5a)が
最も信頼性がありますが,短周期成分の解析結果(5b),P波初動解との間
にかなりの不一致があります。いずれ今後再検討する必要がありますが,現ネ
ットワークの解析能力を正直に表すために,あえて載せました。
もう1つは,6月17日未明の東京直下の地震。震源の位置はフィリピン海
プレート(PHS)内の上面すれすれぐらいのところと思われますが,メカニ
ズムをどう解釈したものか,困っています。
これまでにおよそ50個ほどの地震についての解析結果が蓄えられました。
それによりますと,地震モーメントMoと震源時間関数のパルス幅τの間には
Mo=cτ3
の関係が見られます。cは深さに依存する定数です。およそ50kmより深い
地震に対して
c=1×10**24 [dyn.cm/s3]
浅い地震に対して
c=1×10**23 [dyn.cm/s3]
です。これを標準値として,各地震を評価してみました(Mo/τ3の項)。
Mo/τ3の値は,物理的には,応力降下に比例する量です。前ページの表で,
No.3と 6の地震はほとんど同じ断層面上で起こったと思われますが,これらの
応力降下が大きく違っているのが注目されます。
(M.K)