EIC地震学ノート No.72                 Nov. 14, 99

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析(暫定解)◆ --------------------------------------

11月12日トルコ北西部の地震(Ms7.3)

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● 概略・特徴: 11月12日午後7時(現地時間)に、8月17日の大地震の震源
から約110km東、ドゥズジェ付近を震源とするMs7.3の大地震が発生しました。この地震
で少なくとも死者300名以上、けが人数千人が出た模様です。USGSによる速報震源は次
の通りです。

     発生時刻           震央      深さ    Ms
 99/11/12 16:57:20 (UT)   40.79°N  31.11°E    10 km  7.3 

●データ処理: IRIS-DMCから収集した19地点の広帯域地震計記録(P波上下動)を用
いて解析しました。観測点分布は概ね良好です。

●結果: 結果を図1に示します。主な震源パラメータは
次のとおりです。

 走向、傾斜、すべり角 =  (261, 59, -173)
                   北傾斜の断層面で右横ずれ断層
 地震モーメント  Mo  =  4.6 x10**19 Nm  (Mw = 7.0)
  破壊継続時間(主破壊) T  = 13 s
 深さ          H = 10 km
 主破壊の断層長(非対称双方向伝播 v=2.5km/sを仮定)L ≒ 40 km
      (内訳:5s双方向+5s片方向)
 断層面積(W=15kmと仮定)  S = 40km x 15km
 食い違い       D = Mo / μS = 2.6 m (μ=30GPa)
 応力降下      Δσ = 2.5 Mo/ S**1.5 = 7.8 MPa

● 解釈その他:我々の予想とは逆に、8月の大地震の東側で大きな地震が発生しまし
た。しかも前回からわずか3ヶ月後です。GPS観測で地殻変動が東へ移動するよう
な兆候は何かあったのでしょうか。地震モーメント(エネルギーにほぼ比例)は前
回の約1/4ですが、それでも兵庫県南部地震の2倍です。メカニズムは8月の地震と少
し異なり、北に60°ほど傾斜した断層面で、ほぼ東西走向の右横ずれ断層です。細か
くは2つのサブイベントが同定されます。
                           (文責:菊地・山中)