EIC地震学ノート No.58                 Mar. 30, 99

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析(暫定版)◆ --------------------------------------------

3月28日インド北部の地震(Ms 6.6)

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● 概略・特徴: 3月29日午前0時35分(現地時間)インド北部でMs6.6の地震があり、
ウッタルプラデシュ州で少なくとも死者50人を越える被害があった模様です。
USGS(米国地質調査所)による震源諸元は次の通りです。

    発生時刻       震央         深さ    マグニチュード
 03/28 19:05:14 UT   30.49°N  79.29°E   normal   6.6 (Ms)  6.3(mb)

● データ処理: IRIS-DMCのデータを地震研究所の準リアルタイムサービス 
(gopher) により収集しました。解析には21地点の広帯域地震計記録(P波上下動)を
用いました。観測点の方位分布は良好です。グリーン関数の計算にあたっては、後続
相の波形を考慮して、地殻の厚さを42kmとした構造を用いました。

●結果:解析結果を図1に示します。主な震源パラメータは以下のとおりです。

 走向、傾斜、すべり角 =  (277, 16, 76)/(112, 75, 94)
              北北東-南南西圧縮の逆断層型
 地震モーメント     Mo  =  2.9 x10**18 Nm  (Mw = 6.2)
  破壊継続時間      T  = 3.0 s 
 深さ(Centroid)      H = 15 km
 断層面積(双方向破壊伝播を仮定)  L = 2x2.5km/sx2s = 10km
             S = LxL/2 = 5.0x10 km**2
 くいちがい        D = Mo/μS = 1.9 m   (μ=30 GPa)
 応力降下         Δσ = 2.5Mo/S**1.5 = 20 MPa

● 解釈その他:北北東-南南西圧縮の逆断層(北側へ緩傾斜または南側へ急傾斜の
断層面)です。震源の深さが15kmと比較的浅かったこと、応力降下がかなり大きい
(短周期の波が大きく出る)地震であったことが家の倒壊に結びついたと考えられ
ます。
                           (文責:菊地・山中)