EIC地震学ノート No.50                Sep. 3, 98

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析 (ver.980917) ◆ -------------------------------------

9月3日岩手県内陸北部の地震(Mj 6.1)

----------------------------------------------------------------------


● 概略・特徴: 9月3日夕方岩手山西部で局所的にかなり強い揺れ(震度6弱)を
記録しました。気象庁による震源諸元は次の通りです。

 発生時刻        震央       深さ    マグニチュード
 16:58 JT    39.80°N  141.00°E    7 km   6.1 (Mj)

● データ処理: IRIS-DMCのデータを地震研究所の準リアルタイムサービス (gopher)
により収集しました。解析には9地点の広帯域地震計記録(P波上下動)を用いました。
波形はかなりノイズに埋もれていますが、短時間の明瞭なパルスを呈しています。

●結果:解析結果を図1に示します。主な震源パラメータは以下のとおりです。

 走向、傾斜、すべり角(全体) =  (216, 41, 131)/(347, 60, 61) 
 地震モーメント     Mo  =  6.9 x10**17 Nm  (Mw = 5.8)
  破壊継続時間      T  = 3.0 s 
 深さ(Centroid)      H = 2.5 km
 断層面積(双方向破壊伝播を仮定)  L = 2x2.5x2 = 10km
             S = LxL/2 = 50 km**2
 くいちがい        D = Mo/μS = 0.5 m   (μ=30 GPa)
 応力降下         Δσ = 2.5Mo/S**1.5 = 4.9 MPa

● 解釈その他:観測点が偏っていますので、メカニズム解の精度はあまりよくありま
せん。東西圧縮の逆断層です。震源はかなり浅く、重心の深さは断層幅の半分程度で
す。断層が一部地表に達している可能性もあるのではないかと考えられます。
                           (文責:菊地・山中)


(追記1)岩手山の下のマグマが見えた?(速報)
 
(追記2)9月5日付け新聞報道によると、この地震に伴って、雫石町西根で、南北約
0.7kmの地表地震断層が出現、段差は約20cmで西側が東側に対して盛り上がっている
とのことです。約40°の傾斜で西側が東側に0.5mのし上がったという地震波解析結
果と調和的です。