東大震研情報センター
◆遠地実体波解析◆ ----------------------------------------------------
5月30日アフガニスタンの地震(Ms 6.9)
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● 概略・特徴: 5月30日10時52分(現地時間)、アフガニスタン北部のタカ ール州からバダクシャン州にかけて地震が発生しました。報道によると、この地震で 約5千人が死亡した模様とのことです。USGSの速報による震源諸元は次の通りです。 発生時刻 震央 深さ マグニチュード 06:22:28 UT 37.21°N 69.93°E 35 km 6.9 (Ms) ● データ処理: IRIS-DMCのデータを地震研究所の準リアルタイムサービス (gopher) により収集しました。解析には16地点の広帯域地震計記録(P波上下動)を用いまし た。見るからに波形は複雑で、メカニズムの変化を考慮したインバージョンでは、4 個のサブイベントを求めました。 ●結果:解析結果を図1に示します。4個のサブイベントはいずれも北北西-南南東 圧縮のほとんど純粋な横ずれ型です。震源の拡がりは30km程度で、わずかながら北 北東方向への破壊伝播が優勢です。主な震源パラメータは以下のとおりです。 走向、傾斜、すべり角(全体) = (198, 86, 6) /(107, 84, 176) 破壊伝播から前者(左横ずれ型)と推定される 地震モーメント Mo = 7.4 x10**18 Nm (Mw = 6.5) 破壊継続時間 T = 18 s 深さ(Centroid) H = 10 ± 3 km 断層面積 S = 30x10 km**2 くいちがい D = Mo/μS = 0.6 m (μ=30 GPa) 応力降下 Δσ = 2.5Mo/S**1.5 = 3.6 MPa ● 解釈その他:全体の応力降下は内陸の地震としては小さめですが、個々の小断層 ごとで考えると10Mpaぐらいの応力降下を伴っています。破壊の伝播方向については 確定的ではありません。震源から見て南東方向に観測点がないのが決め手に欠く原 因です。震源はごく浅いこと、短周期の地震動が励起されたと推測されることなどが 特徴です。 (文責:菊地・山中) <追加>今回の震源の近くで2月4日にMs6.1(Mw5.8)の地震が起こりました。この 地震でも死者3千人余りが出たと報じられています。地震規模から考えると、俄には 信じがたい数字です。遠地実体波の解析結果を図2に示します。(98/06/25)