EIC地震学ノート No.45                  Jun 5, 98

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析◆ ----------------------------------------------------

5月30日アフガニスタンの地震(Ms 6.9)

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● 概略・特徴: 5月30日10時52分(現地時間)、アフガニスタン北部のタカ
ール州からバダクシャン州にかけて地震が発生しました。報道によると、この地震で
約5千人が死亡した模様とのことです。USGSの速報による震源諸元は次の通りです。

  発生時刻        震央       深さ    マグニチュード
 06:22:28 UT    37.21°N  69.93°E    35 km    6.9 (Ms)

● データ処理: IRIS-DMCのデータを地震研究所の準リアルタイムサービス (gopher)
 により収集しました。解析には16地点の広帯域地震計記録(P波上下動)を用いまし
た。見るからに波形は複雑で、メカニズムの変化を考慮したインバージョンでは、4
個のサブイベントを求めました。

●結果:解析結果を図1に示します。4個のサブイベントはいずれも北北西-南南東
圧縮のほとんど純粋な横ずれ型です。震源の拡がりは30km程度で、わずかながら北
北東方向への破壊伝播が優勢です。主な震源パラメータは以下のとおりです。

 走向、傾斜、すべり角(全体) =  (198, 86, 6) /(107, 84, 176)
       破壊伝播から前者(左横ずれ型)と推定される
 地震モーメント     Mo  =  7.4 x10**18 Nm  (Mw = 6.5)
  破壊継続時間      T  = 18 s 
 深さ(Centroid)      H = 10 ± 3 km
 断層面積         S = 30x10 km**2
 くいちがい        D = Mo/μS = 0.6 m   (μ=30 GPa)
 応力降下         Δσ = 2.5Mo/S**1.5 = 3.6 MPa

● 解釈その他:全体の応力降下は内陸の地震としては小さめですが、個々の小断層
ごとで考えると10Mpaぐらいの応力降下を伴っています。破壊の伝播方向については
確定的ではありません。震源から見て南東方向に観測点がないのが決め手に欠く原
因です。震源はごく浅いこと、短周期の地震動が励起されたと推測されることなどが
特徴です。
                           (文責:菊地・山中)


<追加>今回の震源の近くで2月4日にMs6.1(Mw5.8)の地震が起こりました。この
地震でも死者3千人余りが出たと報じられています。地震規模から考えると、俄には
信じがたい数字です。遠地実体波の解析結果を図2に示します。(98/06/25)