EIC地震学ノート No.44                  May 29, 98

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析(暫定解)◆ --------------------------------------------

5月28日パキスタンの核実験(mb4.8)

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● 概略・特徴: 日本時間5月28日19時16分、パキスタンの西部バルチスタン
州で核実験が行なわれました。USGSによる震源諸元は次の通りです。

  発生時刻        震央       深さ    マグニチュード
 10:16:15 UT   28.96°N  64.73°E     0 km      mb4.8

● データ処理: IRIS-DMCのデータを準リアルタイムサービス (spyder) により収集
しました。解析には7地点の広帯域地震計記録(P波上下動)を用いました。

●結果:単一の震源ではうまくモデル化できず、少なくとも2個以上の震源から成る
ように見えます。とりあえず2個の震源を仮定し、等方成分(I)を含むモーメントテ
ンソル(MT)のインバージョンを行いました。解析結果を図1に示します。MTは次の通
りです。
        Mij =  10.7  -2.5  1.4  [x10**15 Nm]
                -2.5   6.7 -1.3
                 1.4  -1.3  3.8        (x1,x2,x3) = (North, East, Down)

 主値M1,M2,M3、及び、等方成分Iは

        M1,M2,M3 = 12.3, 5.7, 3.3  [x10**15 Nm]
         I = (M1+M2+M3)/3 = 7.1 [x10**15 Nm] 

です。2つの震源の発震時の間隔は1.1s、等方成分の相対的な大きさは3:4です。
また、USGSの震源に対する位置の補正は北へ10km、東へ7kmです。各イベントの
破壊継続時間と深さは共通で

        破壊継続時間      T  < 0.2 [s] 
        深さ(Centroid)      H = 0.5 [km]

● 解釈その他:95年、96年のフランスの核実験の際に得られた、等方成分とTNT火薬
相当量(W)との関係式   W [kT] = 4 I [x10**15 Nm]  を適用しますと、

   W = 12+16 = 28 [kT]

となります。5月11日のインドの核実験では、相当量は30kTでした。したがって
1発か、2発かの違いはありますが、トータルの規模は概ね同じであったと推定さ
れます。
                       (文責:菊地・山中・足立)