EIC地震学ノート No.26               Oct. 03, '97

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析:暫定解◆ ----------------------------------------

9月30日鳥島東方沖の地震(Mj 6.5)

-------------------------------------------------------------------


● 概略・特徴: 9月30日15時28分(日本時間)、鳥島東方沖を震源とする
Mj 6.5の地震がありました。気象庁は関東・東海の沿岸及び伊豆諸島沿岸に津波注意
報を発令しましたが、約30分後に解除しました。気象庁発表の震源諸元は次のとお
りです。
  発生時刻          震央         深さ   マグニチュード
 15:28 JST      31.7°N  142.2°E      20 km     6.5  (Mj)

● データ処理: IRIS-DMCの準リアルタイムサービス (spyder) により11地点の広帯
域地震計記録(P波上下動及びSH波)を集めました。今回はDMCに何かトラブルがあっ
たらしく、データが収集できたのは約1日後でした。 
 遠地実体波(とくにP波)の観測波形は大変複雑で数十秒間揺れ続けています。こ
のことから、海溝軸のごく近傍の地震と思われます。グリーン関数の計算には水平成
層構造(6 kmの海水層を含む)を用いていますので、海底の傾斜の影響による後続波
は説明できないか、あるいは、見掛け上震源に組み込まれている可能性があります。

●結果: はじめの30秒以内の範囲にサブイベントを求めました。解析結果を図1に
示します。正断層型の2つのサブイベントから成ります。最適の深さは28kmですので、
海洋プレート内部の地震と思われます。この場合 Down-dip extension (プレートに
沿った引っ張り)型です。なお、2つ目のサブイベントは、海底傾斜の影響による見
掛けの震源の可能性もあります。主な震源パラメタは次の通りです。

 サブイベント (str,dip,rake)   Mo                Mw   T
  #1             (187, 83, -90)   1.9 x10**18 Nm    6.1   8 s
  #2             (176, 48, -87)   2.9               6.2  12 s
  Total          (183, 62, -84)   4.0 x 10**18 Nm   6.3

● 解釈その他: USGS、Harvard CMTはいずれも低角逆断層的な解を出しています。
震源の深さも、前者は10km、後者は15km(固定)となっています。もう少し検討する
必要と価値のある地震と思われます。              (文責:菊地)