EIC地震学ノート No.16                  Mar. 12, 97

東大震研情報センター

◆近地波形解析◆ ----------------------------------------

3月3〜7日 伊東沖群発地震(最大Mj5.7)

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● 概略・特徴: 3月3日未明から始まった伊東沖群発地震は、最大規模Mj 5.7
(3月4日12時51分)の地震を含め有感地震400個余りをもって収束に向かっ
ているようです。この間、伊東市では震度5弱が3回ありましたが、上記の最大規模
地震における震度は4止まりでした。

● データ処理: FREESIAの観測点JIZ(中伊豆)と横浜市立大学の観測点HKY(箱根
湯本)の広帯域地震計記録をダイヤルアップで収集しました。気象庁マグニチュード
 (Mj) で4.6以上の地震を解析しました。JIZは震源のほぼ真西、15km、HKYはほぼ真
北35kmに位置します。したがってJIZのNS成分、HKYのEW成分はほぼSH (Transverse) 
になります。変位に換算した観測記録を図1に示します。最大地震では、上下動
で1cm、水平動で2cmほどの揺れです。波形インバージョンでは震央、深さを(34.92N,
139.12E, 5.5km)に固定し、メカニズムと震源時間関数を最小自乗法で求めました。
グリーン関数の計算には Takeo&Mikami の方法を用いました。

●結果: 解析結果を図3〜9に示します。主な震源パラメタは表1の通りです。要
点は
 1)メカニズムは北西−南東ないし西北西−東南東方向の圧縮軸を持つ横ずれ型で
   ある。
 2)MwはMjより系統的に0.3-0.4ほど小さい。
 3)規模の上位2つの地震の破壊継続時間は2.5-3秒であり、下位の地震の継続時
   間(1秒未満)との間にギャップがある。

表1 波形解析結果
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  日時      Mj  最大震度  Mo   Mw  (strike,dip,rake)   継続時間   図
            (x10**15 Nm)
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03/03  20:11   4.6   4      2.9   4.2   (287,89,-170)      0.6s       図3
       23:09   5.2    5-    27     4.9   (280,73,-140)      2.5        図4
03/04  00:30   5.1    4     11     4.6   (299,90, 180)      0.9        図5
       12:51   5.7    4    100     5.3   (161,70,   2)      3.0        図6
03/05  22:43   4.6    5-     2.4   4.2   (280,86,-175)      0.7        図7
03/07  16:33   4.7    5-     5.2   4.4   (182,60, 14)       0.8        図8
       21:35   4.6    4      1.8   4.1   (280,84,-154)      0.9        図9

● その他: 最下段の地震は2連発地震です。これは1つの多重震源地震というよ
りは、別々の地震と考えるべきでしょう。いずれにせよ珍しい現象です。
                             (文責:菊地正幸)