EIC地震学ノート No.15                  Mar. 3, '97

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析◆ ----------------------------------------------------

2月28日 イランの地震 ( Ms 6.1)

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● 概略・特徴: 2月28日午後4時ごろ(日本時間21時57分)、イラン北西部
で Ms6.1[USGS] の地震がありました。規模のわりに被害が大きく、死者数百名が出た
もようです。USGSの速報震源は以下の通りです。

  発生時刻          震央         深さ   マグニチュード
 12: 57: 22.6 UT   38.10°N  47.79°E     15 km     6.1  (Ms)

● データ処理: IRIS-DMCの準リアルタイムサービスにより広帯域地震計記録を集め
ました。 観測点の方位分布は概ね良好です。解析には震央距離が30~60°の13地点の
P波上下動を用いました。震源近傍の構造として、3層から成る厚さ36 kmの地殻、そ
の下に半無限のマントルを置きました。波形は複雑ですが、構造の影響もかなりあり、
顕著なマルチプルショックであるかどうかわかりません。とりあえず、メカニズムの
変化を考慮し2個の震源を求めました。

●結果: 解析結果を図1に示します。2つの小破壊ともメカニズムはほぼ北西−南
東圧縮の横ずれ断層です。2個目の小破壊はわずかに東側に決まります。これが正し
いとすると、断層面は東西の走向で右横ずれ型と推定されます。深さは 9 km です。
主な震源パラメタは次の通りです。

 走向、傾斜、すべり角    = (278, 90, -157)
  地震モーメント     Mo  = 1.3 x10**18 Nm  (Mw = 6.0)
  破壊継続時間      T   = 3.0 s x2個
 深さ           H   = 9 km
 断層面積(L=2sx2.5x2=10km) S = 10x5 km**2
 くいちがい       D   = Mo/μS = 0.9 m
 応力降下       Δσ  = 2.5Mo/S**1.5 = 9 MPa

● 解釈: 応力降下、メカニズムとも内陸地震の典型的な値です。それにしても、
震源が浅かったとはいえ、この規模の地震でなぜこれだけ大きな被害になってしま
うのか。現地の詳しい調査結果が待たれます。        (文責:菊地正幸)
                                          e-mail: kikuchi@eri.u-tokyo.ac.jp