東大震研情報センター
2月27日 パキスタンの地震 ( Ms 7.3 )
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● 概略・特徴: グリニッジ時で2月27日21時8分(日本時間では28日6時
8分)、パキスタンで Ms7.3[USGS] の地震がありました。今のところ死者数十名以
上が出ているもようです。この近くでは1935年にM7.5の地震があり、ケッタ市
(Qetta) を中心に死者が3万人に達したと言われています(USGS の地震情報)。
USGSの速報震源は以下の通りです。
発生時刻 震央 深さ マグニチュード
21: 08: 02.4 UT 29.90°N 68.1°E normal 7.3 (Ms)
● データ処理: IRIS-DMCの準リアルタイムサービスにより広帯域地震計記録を集め
ました。 観測点の方位分布は概ね良好です。解析には16地点のP波上下動を用いまし
た。震源近傍の構造として、2 層から成る厚さ40kmの地殻、その下に半無限のマント
ルを置きました。波形は明瞭なマルチプルショックを示しています。そこで、メカニ
ズムの変化を考慮し2個の震源を仮定して、最適のメカニズムと震源の深さを決め、
次に各々の震源時間関数を決め直しました。
●結果: 解析結果を図1に示します。2つの小破壊ともメカニズムはほぼ北に傾斜
した低角逆断層(または南に傾斜した高角逆断層)です。深さは19km。2番目のサブ
イベントが相対的に南側 10~20 km の位置に来ます。分解能はよくありませんが、仮
にこれが正しいとすると、低角面が断層面と考えられます。主な震源パラメタは次の
通りです。
サブイベント 走向、傾斜、すべり角 Mo 破壊継続時間
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#1 (266, 21, 90 ) 0.76 9 s
#2 (277, 9, 90 ) 1.8 15 s
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Total (274, 13, 91) 2.5x10**19Nm 21 s
( Mw = 6.9 )
深さ H = 19 km
地震モーメントはERI のCMT解(Mw6.9)と調和的ですが、ハーバードのCMT解
(Mo=4.3x10**19Nm)よりは小さめです。
● 解釈: 震源はアフガニスタン国境の近くの山岳地帯に位置するようです。この
小規模な山脈の下での低角逆断層と考えられますが、これが『プレート間地震』の範
疇に入るのかどうか私にはわかりません。なお、地震モーメントは兵庫県南部地震の
それとほぼ同じです。しかしあきらかに破壊継続時間が長く、ほぼ2倍です。このこ
とは今回の地震が兵庫県南部地震の応力降下より約1桁(2**3=8)小さいことを示しま
す。 (文責:菊地正幸)
e-mail: kikuchi@eri.u-tokyo.ac.jp