EIC地震学ノート No.12                 Jan. 8, '96

東大震研情報センター

◆近地実体波解析◆ --------------------------------------

96年12月29日 駿河湾の地震 ( Mj 3.7 )

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● 概略・特徴: 昨年(96年)暮れ、12月29日14時59分、駿河湾(石花
海堆付近)でマグニチュード(Mj) 3.7の地震とそれに続く余震群がありました(気象
庁:週間地震活動概況による)。いずれも無感地震でマスコミ報道はありませんでし
た。本震の震源諸元について、気象庁と防災科技研で若干の違いがありますが、概略
以下の通りです。

    発生時刻           震央         深さ     マグニチュード
 12/29  14:59 JST   34.8°N  138.5°E    20 km     3.7 (Mj)   3.5(Mn)

● データ処理: FREESIA 及び横浜市立大学の広帯域地震計記録を収集し、4地点の
P波上下動と2地点のSH成分を解析しました。理論計算には波線近似とpropagator-
matrix のハイブリッド法を用いました。各観測点ごとに表層水平成層地盤を仮定し、
また、震源を、全観測点に共通のP波速度5.5 km/s 層の深さ20 km に置きました。P
波速度を変えると、得られるモーメントの値が異なってきますが、メカニズムはほと
んど変わりません。

●結果: 解析結果を図1に示します。メカニズムは北東-南西圧縮の横ずれ断層、
ほぼ単発の地震です。主な震源パラメタは次の通りです。

   走向、傾斜、すべり角           =  (280, 89, -32) / (10, 58, -179)
      地震モーメント               Mo = 2.6 x10**19 Nm    Mw = 3.5
      破壊継続時間                 T  =  0.3 s 
   断層面積 (L= 0.2 s x 2.5 km/s x 2)  S  =  1 x 0.5 km**2
   深さ                   h  =  20 +- 5 km
   食い違い                   D  =  Mo/μS = 0.02m  (μ= 23 GPa)
   応力降下          Δσ  =  2.5 Mo/S**1.5 =  1.9 MPa

● 解釈:メカニズムからみてプレート内地震と考えられます。震源の深さの精度が
悪いため、はっきりとは断定できませんが、フィリピン海プレート内部であると思
われます。圧縮軸は Ukawa (JGR, 1991) の解釈に調和的です。  
                                                (文責:菊地正幸・山中佳子)
                                          e-mail: kikuchi@eri.u-tokyo.ac.jp