EIC地震学ノート No.10                  Dec. 22, '96

東大震研情報センター

◆実体波解析◆ -------------------------------------------

12月21日 茨城県南部の地震 ( Mj 5.5 )

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● 概略・特徴:12月21日10時29分(日本時間)、関東中心にかなり強い地震が
ありました。日光市で震度5の弱(計測震度4.5)を記録。岩が崩れ落ちたり、窓ガラスが
割れるなどの被害もあったようです。気象庁とUSGSの速報震源は以下の通りです。
     発生時刻         震央        深さ     マグニチュード
気象庁 10:29    JST   36.1°N  139.8°E    40 km      5.5  (Mj)
USGS   10:28:45 JST   36.0°N  139.8°E    40 km     5.6  (mb)

● データ処理: 南関東に配置されている広帯域地震計(横浜市大、FREESIA、気象研)
の記録をダイヤルアップで集めました。 解析には5地点のP波上下動、2地点のSH波
を用いました。震源はP波速度6.7km/sの層に置き、各観測点ごとの表層構造を考慮しま
した。これらの記録でメカニズムを求める一方、遠地の実体波記録(IRIS)を用いて、震
源の深さを決めました。

●結果: 解析結果を図1に示します。メカニズムは北西-南東圧縮で、横ずれ成分を
伴った低角逆断層です。深さは 45-47km です。主な震源パラメタは次の通りです。
   走向、傾斜、すべり角           =  (271, 24, 133)
      地震モーメント               Mo = 2.9 x10**17 Nm    Mw = 5.6
      破壊継続時間                 T  =  1 s 
   断層面積 (L=0.8 s x 2.5 km/s x 2 )  S  =  4 x 2 km**2
   深さ                   h  =  45-47  km
   食い違い                   D  =  Mo/μS = 0.90 m  (μ= 40GPa)
   応力降下          Δσ =  2.5 Mo/S**1.5 =  32 MPa

● 解釈:メカニズム、震源の位置から考えて、フィリピン海プレートの潜り込みに伴
うプレート間地震と考えられます。しかし応力降下がかなり大きめです。強震動にその影
響(短周期的)が現われているかどうか興味があります。また、92年4月14日にほぼ
同じ位置で同じメカニズムの地震が起こっています(Mw 5.0  YCUレポート#7参照)。
                               (文責:菊地正幸)