EIC地震学ノート No.9                  Dec. 4, '96

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析◆ --------------------------------------

12月3日 日向灘の地震 ( Ms 6.7 )

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● 概略・特徴: 12月3日7時18分(日本時間)、日向灘を震源とする地震が
あり、宮崎で震度5の弱を記録したほか、九州南部を中心に広い範囲で揺れを感じま
した。気象庁は九州の南東海岸などに津波注意報を発令、日南市で21cmの津波が
観測されました。今回の震源は10月19日発生したMw6.8の震源の西隣に位置しま
す。規模がほとんど同じであることから、これら2つの地震が、本震・余震なのか本
震・本震なのか、判定がむずかしいところです。気象庁とUSGSの速報震源は以下の通
りです。

     発生時刻          震央          深さ     マグニチュード
気象庁 07:17:58.6 JST   31.78°N  131.63°E    35 km      6.3  (Mj)
USGS   07:17:57.2 JST   31.80°N  131.22°E    33 km     6.7  (Ms)

● データ処理: IRIS-DMCの準リアルタイムサービスにより広帯域地震計記録を集め
ました。 観測点の方位分布は良好です。解析には10地点のP波上下動、4地点のSH
波を用いました。震源近傍の構造として、水3kmの海水層と厚さが10kmの地殻、そ
の下に半無限のマントルを置きました。まず1個の震源を仮定して最適のメカニズム
を決め、次に断層面を固定して破壊の時空分布を求めました。

●結果:解析結果を図1に示します。メカニズムは北西-南東圧縮の低角逆断層です。
深さはやや深めで40kmです。空間的な広がりは必ずしもはっきりしませんが、
浅い方向、北向きに破壊が進んだという解が得られました。主な震源パラメタは次
の通りです。
   走向、傾斜、すべり角           =  (196, 12, 71)
      地震モーメント               Mo = 1.15 x10**19 Nm    Mw = 6.6
      破壊継続時間                 T  =  12 s 
   断層面積 (L=10s x 2.5 km/s )  S  =  25 x 13 km**2
   深さ                   h  =  40  km
   食い違い                   D  =  Mo/μS = 0.55m  (μ= 64 GPa)
   応力降下     Δσ =  2.5 Mo/S**1.5 =  4.9 MPa

● 解釈:メカニズム、応力降下、震源の位置から考えて、プレート間地震と考えら
れます。10月19日の地震と同様に、破壊が北方に進む解が得られました。しかし
10月の地震も今回の地震も、余震分布はそのようなはっきりした指向性はないよう
です。また、マグニチュードがほぼ同じであること、震源の位置が少し離れていて、
余震域がオーバーラップしないように見えることなどは、これらが2つの本震と考え
てもよさそうなことを示しています。今後の成り行きが注目されます。
 阿部によると、津波マグニチュードはMt=6.4です(油津での波高(谷から峰)31cm
細島で9cmから計算)。   
                                                 (文責:菊地正幸)