EIC地震学ノート No.6                  Oct. 25, '96

                            東大震研情報センター

◆近地実体波解析◆ -------------------------------------------

10月25日神奈川県北西部の地震 (Mj 4.9)

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●概略・特徴: 10月25日12時25分、神奈川山梨県境付近を震源とする地震
がありました。気象庁および東京大学地震研究所による速報震源は、それぞれ

        震央       深さ    
気象庁  35.5°N  139.0°E   30 km    Mj = 4.9
地震研 35.46°N  139.02°E   23 km   M =  5.2

でした。この近くでは本年3月6日に Mw 5.3 の地震が起きています。規模は小さい
のですが、想定東海地震との関連で毎度議論になる地震です。

●データ処理: 南関東・東海地方に展開している広帯域地震計ネット(FREESIA、
横浜市立大学)から2地点(菅野、高尾)の実体波記録(P波・SH波)を収集しまし
た。震源の位置として地震研の値を用いました。ただし、気象庁の値を用いても、
結果はほとんど変わりません。グリーン関数の計算には波線近似法を使いました。

●結果: 解析結果を図1に示します。破壊は単純で、継続時間が0.35 秒の単発地
震です。メカニズムは北西南東圧縮の低角逆断層です。主な震源パラメタを下に示
します。

   (走向、傾斜、すべり角) =    (222, 25, 87)
    地震モーメント         Mo =  3.3 x 10 **16 Nm  (Mw = 4.9)
    破壊継続時間          T = 0.35 s    
    断層面積(両方向破壊 3 km/s) S = 1.2 x 0.6 km**2
    深さ               h  = 24 km (固定)
    食い違いの大きさ               D  =  Mo/μS = 1.5 m  (μ= 30 GPa)
    応力降下                   Δσ =  2.5 Mo/S**1.5 = 135 MPa

●解釈: メカニズムは本年3月6日の地震とほとんど同じです(YCU地震学レポー
ト#53参照)。これを見る限りプレート間地震の様相を示していますが、応力降下は
まれに見る高さ(1kbar 以上)です。この辺で起こる地震は一般に高応力降下を示し
ますが、これほど極端ではありません。そもそもM5クラスでは破壊継続時間は数秒が
普通ですが、この地震の継続時間はその1桁ほど小さいものです。これをどう解釈す
べきかが問題です。                    (文責:菊地正幸)