EIC地震学ノート No.4         Oct. 19, '96

                  東大震研情報センター

◆遠地実体波解析◆ -------------------------------------------

10月18日種子島近海の地震 (Mj 6.2)

------------------------------------------------------------

●概略・特徴: 10月18日19時50分、種子島近海で地震があり、種子島では
17cmの津波が観測されました。この地震の震源諸元について、気象庁の値とUSGS
(米国地質調査所)の値にかなりの差があります。それぞれ以下の通りです。
            震央            深さ     マグニチュード
気象庁 30.6°N     131.2°E      60 km   6.2 (Mj)
USGS   30.63°N    131.06°E      10 km    6.6 (Ms)

●データ処理: IRIS-DMCの準リアルタイムサービスにより広帯域地震計記録を集めま
した。 観測点の方位分布は良好です。P波上下動のみ20地点の記録を用いました。震
源近傍の構造として、水深3kmの海水層と厚さ10kmの地殻、その下に半無限のマン
トルを置きました。波形インバージョンでは、まず断層メカニズムを決め、次に断層
面を固定して、サブイベントの時空分布を求めました。

●結果: 解析結果を図1に示します。低角逆断層のメカニズムですが、必ずしも高
角の断層面の方が波形の一致が悪い訳ではありません。深さの範囲は25〜35kmで
す。15kmより浅い震源、40kmより深い震源では波形の一致が良くありません。モ
ーメントマグニチュードMwは6.7で、気象庁のMjよりかなり大きめです。顕著なことは
波動の方向性(diectivity)です。破壊が北東方向に進んだことを示しています。主
な震源パラメタを下に示します。

    走向、傾斜、すべり角 =        (238, 12, 90)
    地震モーメント         Mo =  1.2 x 10 **19 Nm    (Mw = 6.7)
    破壊継続時間          T = 23 s    
    断層面積(サブイベントの範囲)  S =  30 x 15 km**2
    深さ               h  = 35 km 
    食い違いの大きさ              D  =  Mo/μS = 0.42m  (μ= 64 GPa)
    応力降下                 Δσ =  2.5 Mo/S**1.5 = 3.1 MPa

●解釈: 波形インバージョンだけからは断層面を特定できませんが、応力降下は3
Mpaと低く、プレート間地震の代表的な値を示します。したがって、プレート間の低
角逆断層と考えられます。観測された津波のMtがどれだけかわかりませんが、震源が
種子島のごく近傍であること、食い違いが40cm程度あることを考えると、Mwに見合っ
た津波の大きさであったと思われます。      

◆追記(Oct.23):阿部によると津波マグニチュードMt は 6.7 でした。
                                                           (文責:菊地正幸)