東大震研情報センター
10月18日種子島近海の地震 (Mj 6.2)
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●概略・特徴: 10月18日19時50分、種子島近海で地震があり、種子島では 17cmの津波が観測されました。この地震の震源諸元について、気象庁の値とUSGS (米国地質調査所)の値にかなりの差があります。それぞれ以下の通りです。 震央 深さ マグニチュード 気象庁 30.6°N 131.2°E 60 km 6.2 (Mj) USGS 30.63°N 131.06°E 10 km 6.6 (Ms) ●データ処理: IRIS-DMCの準リアルタイムサービスにより広帯域地震計記録を集めま した。 観測点の方位分布は良好です。P波上下動のみ20地点の記録を用いました。震 源近傍の構造として、水深3kmの海水層と厚さ10kmの地殻、その下に半無限のマン トルを置きました。波形インバージョンでは、まず断層メカニズムを決め、次に断層 面を固定して、サブイベントの時空分布を求めました。 ●結果: 解析結果を図1に示します。低角逆断層のメカニズムですが、必ずしも高 角の断層面の方が波形の一致が悪い訳ではありません。深さの範囲は25〜35kmで す。15kmより浅い震源、40kmより深い震源では波形の一致が良くありません。モ ーメントマグニチュードMwは6.7で、気象庁のMjよりかなり大きめです。顕著なことは 波動の方向性(diectivity)です。破壊が北東方向に進んだことを示しています。主 な震源パラメタを下に示します。 走向、傾斜、すべり角 = (238, 12, 90) 地震モーメント Mo = 1.2 x 10 **19 Nm (Mw = 6.7) 破壊継続時間 T = 23 s 断層面積(サブイベントの範囲) S = 30 x 15 km**2 深さ h = 35 km 食い違いの大きさ D = Mo/μS = 0.42m (μ= 64 GPa) 応力降下 Δσ = 2.5 Mo/S**1.5 = 3.1 MPa ●解釈: 波形インバージョンだけからは断層面を特定できませんが、応力降下は3 Mpaと低く、プレート間地震の代表的な値を示します。したがって、プレート間の低 角逆断層と考えられます。観測された津波のMtがどれだけかわかりませんが、震源が 種子島のごく近傍であること、食い違いが40cm程度あることを考えると、Mwに見合っ た津波の大きさであったと思われます。 ◆追記(Oct.23):阿部によると津波マグニチュードMt は 6.7 でした。 (文責:菊地正幸)