東大震研情報センター
10月5日静岡県中部の地震 (Mj 4.4)
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●概略・特徴: 10月5日9時51分、静岡県中部を震源とする地震がありました。 気象庁による震源諸元(再決定)は 震央 35.00°N 138.04°E 深さ 26 km Mj = 4.4 でした。震源の位置はちょうどフィリピン海プレート(PHS)とユーラシアプレート (EUR)の境界付近(Ishida [JGR, 1992]の図から判断)に位置します。したがって、 規模は小さい(断層の長さが1 km程度)のですが、想定東海地震との関連で注目され る地震です。 ●データ処理: 南関東・東海地方に展開している広帯域地震計ネット(FREESIA)か ら、3地点(清水、地蔵堂、菅野)の実体波記録(P波・SH波)を収集しました。グリ ーン関数の計算には、かなり無理を承知で、波線近似法を使いました。各観測点の表 層構造についてはHaskell - matrix で考慮してあります。 ●結果: 解析結果を図1に示します。波形の一致はあまりよくありませんが、破壊は 比較的単純で、継続時間が0.5 秒の単発地震と思われます。メカニズムは、(1)西緩 傾斜の断層面で下盤が北西に潜り込む解と(2)南西に走向をもつ鉛直断層面で北落ち の解のいずれかですが、波形解析だけからはどちらとも判定できません。地震のモーメ ントマグニチュードMwは気象庁のMjよりかなり大きめです。主な震源パラメタを下に示 します。 (走向、傾斜、すべり角)= (143, 25, -15) / ( 246, 84, -114) 水平断層または鉛直断層 地震モーメント Mo = 1.7 x 10 **16 Nm (Mw = 4.7) 破壊継続時間 T = 0.5 s 断層面積(両方向破壊2.5 km/s) S = 1.5 x 0.8 km**2 深さ h = 30 km (精度不良) 食い違いの大きさ D = Mo/μS = 0.46 m (μ= 30 GPa) 応力降下 Δσ = 2.5 Mo/S**1.5 = 32 MPa ●解釈: 震源の位置はほぼプレート境界に位置しますが、メカニズムを見る限り、プ レート間地震ではなさそうです。一方、応力降下もプレート間地震の平均的な値 (3MPa)より有意に大きく、プレート内地震の兆候を示します。そこで問題は、プレー ト境界面の上側(EUR)か下側(PHS)かです。下側プレート内とすれば、プレート傾斜方向 の引っ張り力(downdip-extension)に伴う地震と解釈されます。上側プレート内とす るとどう解釈すればよいのかわかりません。 (文責:菊地正幸)