EIC地震学ノート(試作版) Aug. 15, 96
8月11日宮城県鳴子町の地震の遠地実体波
8月11日未明、宮城県北部で起こった地震は、震源の規模はそれほど大きく
なかったにもかかわらず、鳴子町を中心に建物や道路にかなりの被害がでました。
気象庁などの情報によると震度5を記録した地震はいずれもM5クラスで、3回
起こっています。ここではそのうちの最大の地震について調べました。用いた震源
情報は以下の通りです(Mj以外は東北大学による)。
発生時刻:96/08/11 03:12 :17.8
震央 :38.90N 140.64E 深さ:4.8 km
マグニチュード:Mj = 5.9
IRIS(米国地震学研究連合)の広帯域地震計記録16個を用いて、P波部分の波
形インバージョンを行いました。初めにメカニズムの変化を許したインバージョン
を行い、最適の断層メカニズムと深さを求めました。2、3個のサブイベントが得
られましたが、それらのメカニズムはほとんど同じでした。そこで次に、断層面を
固定してサブイベントの時空分布を求めました。得られた結果を図1に示します。
主な断層パラメタは次の通りです。
(走向、傾斜、すべり角)= (199,45,105) / (358,47,75)
地震モーメント Mo = 8.9 x 10 **17 Nm (Mw = 5.9)
破壊継続時間(主部)T = 3 s
断層面積 S = 10 x 5 km**2
深さ(初期破壊点) h = 7 km
食い違いの大きさ D = Mo/μS = 0.6 m (μ= 3 0GPa)
応力降下 Δσ = 2.5 Mo/S**1.5 = 6.3 MPa
メカニズムは東西圧縮の逆断層です。応力降下はほぼ内陸型地震の典型的な値で
す。破壊過程を細かく見ると、継続時間が3秒程度の小破壊が2、3個から成って
います。おそらくは長さ4‾5 km の小断層が連発したものと思われます。
M5クラスの3個の地震のうち1個は東西圧縮の横ずれ型断層です。これははじ
めの断層運動によって断層の南北側に東西圧縮力が増加したため、微妙なバランス
状態にあった小断層系の一部が誘発されたものと考えられます。(文責:MK)