東大震研情報センター
◆遠地実体波解析(暫定解)◆ ------------------------------
2002年8月19日フィジーの深発大地震(M7.6)
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●概略・特徴:8月19日夜11時ごろ(現地時間)、フィジー諸島で 大規模の深発地震が立て続けに2回発生しました。USGSによる速報震源 は次の通りです。 発生時刻 震央 深さ M (A) 8/19 11:01:01 (UT) 21.76°S 179.54°W 6204km 7.5 (B) 11:08:26 (UT) 23.81°S 178.36°E 673km 7.6 ●データ処理:IRIS-DMCから収集した広帯域地震計記録のうち、6地点の 実体波(P波上下動、SH波)を用いました。初めに、点震源でメカニズ ムを決定、次いで、断層面を固定して断層すべり分布を求めました。どち らの地震も、2つのP波節面のうち、高傾斜面を断層面とする方が、わず かに観測波形を良く説明しますが、決定的ではありません。 ●結果:得られた震源モデルを図1、図2、に示します。 主な震源パラメータは次のとおりです。 (A)第1地震 (B)第2地震 深さ(破壊開始点) 620 km 675 km 走向,傾斜,すべり角 (30,79, -82) (55,89,-104) 地震モーメント 3.0x10**20 Nm 3.5x10**20 Nm Mw 7.6 7.6 破壊継続時間 16 s 12 s 断層面積 60km×30km 60km×30km 食い違い(最大) 1.8 m 2.2 m (平均) 1.2 m 1.4 m (μ=142GPa) 応力降下 9.8 MPa 11.5 MPa ●解釈その他:2つのM7.5級の地震が7分間隔で連発するという、極めて珍しい 地震です。2つの地震の震源距離は約320kmで、この間をP波、S波が伝わる時間 はそれぞれ約30秒、50秒です。したがって、2つ目の震源断層は最初の地震のS波 が到達した後、6分の時間遅れをもって動き出したことになります。 2つの地震は、大きさ、メカニズム(Downdip compression)ともよく似ています が、破壊過程の複雑さが異なっているのが注目されます。1番目がぎくしゃくとし た多重震源の様相を示すのに対し、2番目は基本的に1個の急激な破壊です。ここ では歪みがほぼ限界値に達していて、一気に断層がずれたように見えます。 (文責:菊地・山中)