EIC地震学ノート No.118             Mar.6, 2002

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析(改訂版)◆ ----------------------------------------

 2002年3月6日ミンダナオ近海の地震(Ms7.6)

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概略・特徴: 3月6日午前5時16分(現地時間)、ミンダナオ島近海を震源とする
大地震が起こりました。USGSによる速報震源は次の通りです。

     発生時刻         震央      深さ    Ms
 3/05 21:16:9.6 (UT)   6.11°N  124.12°E  shallow 7.6

●データ処理: IRIS-DMCから収集した広帯域地震計記録のうち、22地点のデータ
(P波上下動)を用いて解析しました。はじめに点震源を仮定してメカニズム解を決め、
ついで断層面を固定して断層すべり分布を求めました。

●結果: 結果を図1abに示します。主な震源パラメータは次のとおりです。

 深さ        H = 30 km 
 走向、傾斜、すべり角 = (329, 30,75)  低角逆断層
 地震モーメント   Mo = 1.1x10**20 Nm    (Mw = 7.3)
  破壊継続時間    T  = 20s
 断層長       S=50km×30km
 食い違い      Dmax = 3.2m  Dmean=1.0m
 応力降下     Δσ = 4.7 MPa

●解釈その他: メカニズムは低角逆断層で、セレベス海からミンダナオ島の下に向かって
北東へ潜り込むプレート境界の地震と考えられます。震源はやや深め(35km)ですが、
現地では津波の発生も予想されます。被害が気になります。
 ここでは、1976年8月16日に、死者8千人とも言われる被害を出した巨大地震(Mw8.1)
が起っています。メカニズムは今回の地震と全く同じですが、震源域は約160kmx80kmで今回
のおよそ10倍の広さを持ちます。Stewart & Cohn (1979, Geophys.J.R.astr.)による本震
余震分布図を図2に示します。
 そこで、今回の地震が76年の地震のアスペリテイの1つが動いたのか、あるいは、隣り
合う別のアスペリテイが動いたのかは、今後の地震を評価する上で重要です。後日、76年
の地震のアスペリテイを調べてみようと考えています。
                         (文責:菊地・山中)