EIC地震学ノート No.117 Mar.04, '02

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析(暫定版)◆ ---------------------------

  2002年3月3日アフガニスタン東部の稍深発地震(Ms7.2)

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●概略・特徴: 3日16時38分(現地時間)、アフガニスタン東部を震源とする稍
深発地震(深さ約200km)がありました。この地震で死者5人が出たとの報道がありま
す。USGSの速報震源(QED)は次の通りです。

  発生時刻             震央         深さ   Mw
 02/03/03 12:08:06.2 (UT)   36.44°N  70.45°E    214   7.3

●データ処理: IRIS-DMCから20点の広帯域実体波(P波上下動)記録を収集しました。
はじめに点震源を仮定し、メカニズム解を求め、ついで断層面を固定して断層すべり分
布を求めました。

●結果:図1に結果を示します。断層すべり分布図で、右が西に対応します。
主な震源パラメーターは以下の通りです。

 (走向、傾斜、すべり角)=(279, 25, 84)
 地震モーメント   Mo = 8.8x10**19 Nm  (Mw = 7.2)
  破壊継続時間(主破壊)  T =約10 s
 深さ(破壊開始点)    H = 220 km
 断層面積(主破壊)       S = 30×30 km**2
 食い違い  Dmax = 2.2m   D mean = Mo /μS = 1.2 m (μ= 72GPa)
 応力降下  Δσ = 2.5 Mo/ S**1.5 = 8.1 MPa

●解釈その他:小さいが明瞭な初期破壊を伴う多重震源の様相を呈します。このような
場合の共通点として、破壊開始点から離れたところに断層滑りの大きな場所(アスペリ
ティ)があります。
  この地震はインドプレート・ユーラシアプレートの衝突境界で起こる逆断層地震と考
えられます。震源が深いため、規模の割に甚大被害にならずに済んだと思われますが、
被害の全容は必ずしもはっきりしていません。
  この付近では過去にも大きな稍深発地震が発生しています。杉・ほか(1991春合同
学会)の予稿集を抜粋します。
                        (文責:菊地・山中)