EIC地震学ノート No.110        Oct. 19, 2001(rev. Oct.20)

東大震研情報センター

地震波解析(改訂版)◆ ---------------------------

  2001年10月19日バンダ海の地震(Ms7.4)

--------------------------------------------------


●概略・特徴:19日12時28分(現地時間)バンダ海北部を震源とするMs7.4の
地震がありました。今のところ被害状況は不明です。USGSによる速報震源は次の通
りです。

  発生時刻          震央           深さ   Ms
  01/10/19 03:28:41.3(UT)    4.1°S  123.8°E  shallow  7.4

●データ処理:IRIS-DMCから20点の広帯域実体波(P波上下動)記録を収集しま
した。かなり複雑な波形です。初動から40秒付近に顕著な相が見えます。そこで
まず時間関数が同じ点震源を仮定して2個のサブイベントを求めました。ついでそ
れぞれの震源時間関数を決め直しました。

●結果:図1に結果を示します。横ずれ型のイベントに続いて縦ずれ型のイベントが
初期破壊点から南西約90km付近に得られました。
主な震源パラメーターは以下の通りです。

 震源の深さ    H0 = 15 km
 イベント1(主破壊)
   (走向、傾斜、すべり角)=(272, 89, 3) (左横ずれ型)
   地震モーメント  Mo = 1.9x10**20 Nm  (Mw = 7.5)
   破壊継続時間   T = 18s
   断層面積     L = 60km x 20km
   平均すべり量   D = 4.0m (mu = 40GPa)
   応力降下     Δσ= 11 MPa
 イベント2
   (走向、傾斜、すべり角)=(25, 87, -74) (縦ずれ型)
   地震モーメント  Mo = 0.22x10**20 Nm  (Mw = 6.8)
   破壊継続時間   T = 5s
   
●解釈その他:東西に約60kmの長さの横ずれ型震源断層(Mw7.5)が動いたと考えら
れます。90kmほど離れた地点での縦ずれ型震源断層(Mw6.8)は、この主破壊からの
S波が誘発したと考えられます。震源域のバンダ海からモルッカ海にかけての地
域は、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの南端付近に位置し、複雑な
テクトニクスの様相を呈しています。今後、いろいろなメカニズムの余震が混在
することが予想されます。
                            (文責:菊地・山中)