EIC地震学ノート No.99 Feb.14, '01

東大震研情報センター

◆地震波解析(暫定解)◆ ---------------------------

  2001年2月13日エルサルバドルの地震(Ms6.6)

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● 概略・特徴:13日8時22分(現地時間)エルサルバドルの首都サンサルバド
ルの近くを震源とするMs6.6のがあり、多数の死者行方不明者が出ている模様です。
USGSの震源速報は次の通りです。

  発生時刻        震央            深さ    Ms
 02/13 14:22:05(UT)     13.60°N  88.96°W   shallow  6.6

●データ処理:IRIS-DMCから14点の広帯域実体波(P波上下動)記録を収集しまし
た。かなり複雑な波形で、多重震源の様相を呈しています。初めに、点震源を仮定
してメカニズム解を求め、次いで、2つのP波節面のそれぞれを断層面とみなして、
断層すべりの時空間分布を求めました。

●結果:図1に結果を示します。メカニズム解は東西または南北に走る、ほぼ純粋な
横ずれ型です。図の左下には、南北走向の断層を仮定した場合のすべり分布を示し
ます。図の右が南です。主な震源パラメータは次のとおりです。

 (走向、傾斜、すべり角)=(191, 89, 10)/(101, 80, 179)
 地震モーメント   Mo = 6.0x10**18 Nm  (Mw = 6.5)
  破壊継続時間    T = 約16 s
 破壊開始点の深さ    H = 15 km
 断層面積(余震分布)S = 20x10 km**2
 食い違い      D = Mo /μS = 1.0 m (μ= 30GPa)
 応力降下    Δσ = 2.5 Mo/ S**1.5 = 5.3 MPa

●解釈その他:死者800余名を出した先月13日の地震(Mw7.6)の約90km北で起こりま
した。地震モーメント(エネルギー)は前回の50分の1ですが、震源が浅く、かつ、
破壊過程が複雑であることから、局所的には前回を上回る揺れ(加速度)があった可
能性もあります。前回は潜り込むココスプレート内部の正断層地震でしたが、今回は
上盤側のカリブ・プレート内の横ずれ型地震です。両者の関係は不明ですが、前回の
地震規模からして十分影響範囲にあると思われます。
 今回もまた被害状況が気になります。  
                              (文責:菊地・山中)