EIC地震学ノート No.81                 Jul.09, '00

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析(改訂版)◆ ---------------------------

  7月9日神津島近海の地震(M 6.0)

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● 概略・特徴: 7月9日早朝4時ごろ、神津島近海を震源とする地震があり、
神津島で震度6弱、新島で震度4を記録したほか、南関東・東海の広い範囲で
地震を感じました。これまでに土砂崩れや道路破損の被害が報道されていま
す。気象庁の速報震源は次の通りです。

  発生時刻      震央           深さ   M
 07/09 03:57(JT)     34.1°N  139.3°E    10 km  6.0

●データ処理:IRIS-DMCの5点の遠地実体波(P波、S波)広帯域地震計記録を用
いました。観測点の方位分布はよくありませんが、メカニズム解は信頼できます。

●結果:結果を図1に示します。主な震源パラメータ
は次のとおりです。

 走向、傾斜、すべり角 =  (94, 71, -163)/(358, 74, -20)
 地震モーメント   Mo= 6.1x10**17 Nm  (Mw = 5.8)
  破壊継続時間    T = 3.0 s
 主要破壊の深さ   H = 6 km
 断層面積(双方向伝播を仮定:L=2.0sx2.5km/sx2=10km;W=L/2)
           S = 10x5 km**2
 食い違い      D = Mo /μS = 0.41m (μ=30GPa)
 応力降下    Δσ = 2.5 Mo/ S**1.5 = 4.3 MPa

●解釈その他:メカニズム解は7月1日の地震とほぼ同じ北東-南西引っ張り
の横ずれ型断層ですが、正断層成分も含まれます。東西に走る右横ずれ、また
は、南北に走る左横ずれ断層のいずれかです。今のところ正確な震央はわかり
ませんが、前回と同じ震源断層が動いたとは考えにくく、隣り合った場所で
やや浅めに位置するのではないかと考えられます。今回の地震の規模は、前
回のエネルギーの約1/3、マグニチュードで0.3ほど小さめです。
                         (文責:菊地・山中)