EIC地震学ノート No.82r Jul.12, '00(rev.00/07/18)
東大震研情報センター
◆地震波解析(改訂版)◆ ---------------------------
7月8日三宅島噴火時の長周期地震
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● 概略・特徴: 7月8日夕方6時40分ごろ、三宅島雄山で山頂噴火があり ました。噴煙の高さは約800m、火口の東側の三池浜で約2-3mmの火山灰が積もっ たと報道されています。この噴火とほぼ同じ頃にやや大きい地震がありました。 長周期の卓越した揺れのため震度は小さかったものの、変位振幅でみると規模 はM5クラスでした。震源は雄山山頂直下、深さは2,3km程度かそれより浅く、 何らかの形で噴火と密接に関連していると思われます。 ●データ処理: 防災科学技術研究所のFREESIA観測点から、館山(TYM)、中伊 豆 (JIZ)、都留(SGN)の広帯域地震計記録を集めました。これに周期10-100秒の バンドパスフィルターをかけ、変位記録に変換しました。解析にあたっては、 2種類の震源モデルを用いました。1つは体積成分を含む全6成分のモーメ ントテンソル源(モデル1)、もう1つは鉛直方向の力源(モデル2)です (説明)。 なお、改訂版ではイベントの発生時刻を18:41:35±5秒の範囲内に設定しまし た(三宅島の広帯域地震計記録を参考にして)。 ●結果: <モデル1> 図1に結果を示します。メカニズム解は全方位「押し」(体積膨張)を 表しています。主な震源パラメータは次のとおりです。 震源時 18:41:35.5 モーメントテンソル Mij = ( 1.0 -0.1 -1.1 -0.1 1.4 0.5 -1.1 0.5 3.4) [x10**17Nm] i,j=1(North),2(East),3(Down) 等方成分 I= 1.9x10**17 Nm (Mw = 5.5相当) 体積膨張 ΔV = I/k = 3.8x10**6 [m**3] (体積弾性率 k=50GPa) 破壊継続時間 T = 約10 s 主要破壊の深さ H = 2 km <モデル2> 鉛直方向の力(下向きを正)を深さ2kmに置き、時間関数として正負の三角形 をつないだ関数を用いました。結果を図2に示します。初めの6秒間で 鉛直上向き、次の6秒間で下向きに働く力です。主な震源パラメータは次の通り です。 震源時 18:41:36 力積の最大値 Ft = 2.4x10**12 Ns(ニュートン・秒) 移動流体の質量 M = Ft/v(平均移動速度をv=50m/sと仮定) = 4.8x10**10 [kg] 移動流体の体積 V = M/ρ = 2x10**7 [m**3] ●解釈その他: 観測波形と理論波形の一致の具合からはどちらのモデルが良い か決められません。実際には体積減少だけが単独に起こるとは考えにくく、むし ろ流体の移動と同時進行した可能性があります。微気圧計のデータから噴火時刻 は18:41ごろと推定されていますので、今回の地震は噴火に伴って起こった地震 と考えられます。 (文責:菊地・山中)