EIC地震学ノート No.78                 Jun. 6, '00

東大震研情報センター

◆遠地波形解析(改訂版)◆ -----------------------------

  6月4日スマトラ島の地震(Ms 7.9)

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● 概略・特徴: 6月4日深夜(日本時間6月5日午前1時28分)、スマトラ
島西岸近くを震源とする大きな地震がありました。報道によると、死者58名、
負傷者数百名がでたようです。USGSの速報震源は次の通りです。

  発生時刻         震央      深さ    Ms
 16:28:25.6 (UT)   4.73°S  102.05°E    5 km  7.9

●データ処理:IRIS-DMCの16点の遠地P波広帯域地震計記録を用いました。見る
からに複雑な破壊過程の様相を呈しています。

●結果:結果を図1に示します。主な震源パラメータ
は次のとおりです。

 初期破壊点   (4.56°S, 102.56°E, H=45km)
 走向、傾斜、すべり角 =  (300, 31, 90)
               北東傾斜の低角逆断層
 地震モーメント   Mo= 7.8x10**20 Nm  (Mw = 7.9)
  破壊継続時間    T = 61 s
 主要破壊の深    H = 50 km
 断層面積      S = 120x60 km**2
 食い違い      D = Mo /μS = 1.5m (μ=64GPa)
 応力降下    Δσ = 2.5 Mo/ S**1.5 = 3.2 MPa

●解釈その他:USGSの解とメカニズム、深さとも一致していません。震央はUSGS
の値より東北東へ約60kmに位置します。ハーバード大学の解と深さは一致します
がメカニズム解は合いません。我々の結果(メカニズム、応力降下)は、今回の
地震がインド洋海底の潜り込みに伴うプレート間地震であるを示唆しています。
主要な断層すべりは、やや深め(約50km)にあります。
                          (文責:菊地・山中)