EIC地震学ノート No.75 Mar.29, '00
東大震研情報センター
◆遠地実体波解析(暫定解)◆ --------------------------------------
2000年3月28日父島近海の地震(Mj7.3)
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● 概略・特徴: 3月28日夜、父島近海の深さ100km余を震源とする大地震(気象 庁マグニチュード7.3)がありました。この地震で小笠原で震度3を記録したほか、 関東・東北にかけて有感でした。USGSによる速報震源は次の通りです。 発生時刻 震央 深さ Mw 11:00:21 (UT) 22.41°N 143.59°E 104 km 7.6 ●データ処理: IRIS-DMCから収集した20地点の広帯域地震計記録(P波上下動)を 用いて解析しました。観測点の方位分布は良好です。 ●結果: 結果を図1に示します。主な震源パラメータは次のとおりです。 走向、傾斜、すべり角 = (295,89,88)/(170,2,146) 鉛直縦ずれ断層または水平断層 地震モーメント Mo = 2.4 x10**20 Nm (Mw = 7.5) 破壊継続時間(主破壊) T = 13 s 深さ H = 125 km 断層長 (双方向伝播,v=2.5km/s,破壊伝播時間10sを仮定) L = 50km 断層面積 (幅W=L/2を仮定) S = LxW = 50kmx25km 食い違い D = Mo / μS = 3.1m (μ=64GPa) 応力降下 Δσ = 2.5 Mo/ S**1.5 = 8.0 MPa ●解釈その他:プレート内部の引っ張り(Down-dip extension)による地震と思 われます。鉛直面での縦ずれ断層、または、水平断層のいずれかです。1993年 1月15日の釧路沖地震(Mw7.5)と、メカニズム解、深さ、規模の点で、類似して います。釧路沖地震の場合は水平断層でした。今回どちらが断層面であるかは、 プレート間カップリングと断層面選択の関係を調べる上で興味があります。 なお、日本列島の広い範囲(関東から東北)で有感であったこと(図2)は、プ レートに沿った地震波伝播と関係した"異常震域"の一種と考えられます。 (文責:菊地・山中)