EIC地震学ノート No.180 May. 28, 2006 東大地震研究所 ◆遠地実体波解析(暫定解)◆ -------------------------------------- 5月26日ジャワ島の地震(M6.3) ----------------------------------------------------------------
● 概略・特徴: 5月26日22時54分(UT),インドネシアのジャワ島で
M6.3の地震が発生しました。ジョクジャカルタの南方にあるバントゥール地域
では建物の70-80%が倒壊したという情報もあります.死者は3000名を超え,負傷者
も1万数千人にのぼるということです.
USGSによる速報震源は次の通りです.
発生時刻 震央 深さ M 06/05/26 22:54 (UT) 8.00°S 110.30°E unknown 6.3
●データ処理: IRIS-DMCから収集した広帯域地震計記録(P波上下動31,SH波5)
を用いて解析しました.
●結果: 結果を図に示します。
主な震源パラメータは次のとおりです.
走向、傾斜、すべり角 = (54, 81, 14)/(322, 76, 171) 地震モーメント Mo = 6.8 x10**18 Nm (Mw = 6.5) 破壊継続時間(主破壊) T = 20 s 深さ H = 20 km
●解釈その他:ジャワ島の南側からはオーストラリアプレートが沈み込んでいます.
震源付近でのプレート上面の深さは60kmあたりになりますが,今回の地震は深さ20km
であることから,今回の地震はその沈み込みに伴う地震ではなく,内陸の地震と思われ
ます.メカニズムも横ずれ型です.2つの節面のどちらが断層面かは遠地記録からは
なかなか決めにくいですが,北東−南西方向の節面を断層面とした方が南側の観測点
の波形の特徴は説明しやすいようです.こちらを断層面とすると破壊は北東の
方向に進んだことになります.
今回は規模も小さく,こんなに大きな被害になるとは思ってもいませんでした.遠地
実体波を使った詳細な解析をするにはかなり限界に近い規模で,かなり悪戦苦闘して
時間がかかってしまいました.被害の状況はよくわかりませんが,これ以上被害が
拡大しないことを祈ります.
(文責:山中)