EIC地震学ノート No.168+              Sep 26, 05 
                             東京大学地震研究所


◆近地強震計データ解析(暫定解)◆ -------------------------------------- 

2005年08月16日宮城県沖地震(Mj7.2)の震源過程 

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●EIC地震学No.168では遠地実体波を用いて震源過程解析を行った. ここではK-net, KiK-netのデータを用いて8月16日の地震のより詳細な震源過程を 調べた.

●方法:
震源の位置は気象庁によって求められたものを用い, 遠地実体波解析で求められたメカニズム解析結果を参考に断層面は固定して 断層面上のすべり分布を求めた.K-net, KiK-netのデータを速度波形に直し0.02-1Hz のバンドパスフィルターをかけた.解析には震源距離が近い観測点のP波 到達から50秒を用いた.
手法はKikuchi et al.(2003)でグリッドサイズは5kmである.現在,どの観測点に 対してもグリーン関数の計算には同一の1次元水平多層構造を用いている.

●結果:求められたすべり分布,波形の比較を図1に示す.

 2005/08/16
メカニズム(198, 25,76)
破壊開始点の深さ37 km
Mo (Nm)4.1x10**19 Nm (Mw7.0)
断層面積25 km x 20 km
最大すべり量(m)1.6 m

●結果・考察
遠地実体波解析の結果とほぼ同様のすべり分布となった.
震源より南側の波形は北側とはかなり様子が異なる.この傾向は 1978年の宮城沖地震でも見られた.おそらく構造の影響と思われる. 現在の計算では北側も南側も同じ構造を用いてグリーン関数を計算 しているためこれらの影響は説明できないものと思われる.

 何人かの研究者によって指摘されているように今回の地震の近地強震計 波形記録をみると2つのパルスがみられることから マルチプルなイベント であったことがわかる.しかしこの2つの震源の位置はそれほど違わない ところであったと考えられる.
解析の結果をみると震源時間関数は確かに2つのピークがみられるが その滑りの場所は区別されなかった.

 下図の赤いコンターがこの地震のすべり分布,赤い●は 本震後19日間の余震分布である.これらを比較すると余震は アスペリティの端で起こっていることがわかる.この場所では 1978年宮城沖地震の時も多くの余震が起こった場所であった.

すべり量分布と2005年余震分布.コンターは赤が2005年,青が1978年のもので 0.2m間隔で本震は0.7m以上すべったところ をプロットした.余震分布は気象庁による2005/08/16-09/04までに起きたものを プロットした.

(文責:山中)