EIC地震学ノート No.168              Aug 16, 05 
                               東大地震研究所 

◆遠地実体波解析(暫定解)◆ -------------------------------------- 

8月16日宮城沖地震(Mj7.2) 

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● 概略・特徴: 8月16日11時46分(JST),宮城県沖で Mj7.2の地震が発生しました.この地震による津波も観測された とのことです。けが人が出ている模様です。

気象庁による速報震源は次の通りです.

    発生時刻           震央          深さ   M
 05/08/16 11:46 (JST)   38.1°N    142.4°E      42 km  7.2

●データ処理: IRIS-DMCから収集した広帯域地震計記録(P波上下動28観測点, S波13観測点)を用いて解析しました.

●結果: 結果を図1に示します。 主な震源パラメータは次のとおりです.


 走向、傾斜、すべり角 =  (198, 25, 82)
 地震モーメント  Mo  =  8.2 x10**19 Nm  (Mw = 7.2)
  断層面積     S   =  60km x 40km
 深さ          H = 37 km
  破壊継続時間(主破壊) T  = 25s
 食い違い       Dmax = 0.9 m (8/17 8:00 修正)
    (地震直後版ではηを小さい値にしていたため,Dmaxが大きな値になっていました)

●解釈その他:太平洋プレートの沈み込みに伴うプレート境界型の地震です。 気象庁の震源は1978年宮城沖地震より海溝側で、規模は1978年より多少小さめ です。
宮城沖ではここ30年間にM7.5前後の地震の起こる確率が99%と言われて います。今回の地震が「起こると言われていた地震」かが気になるところです。
下図は今回の地震の滑り分布(赤いコンター)に1978年(青いコンター)と 1936年,1981年の滑り分布を合わせて表示したものです。東大地震研究所で 求めた今回の震源の位置は気象庁の速報値より西側でした.下図は破壊開始点の 位置を地震研で求めた場所としてすべり分布を表示しています. 今回の地震以外はすべて東北地方で観測された強震計記録を使っているので、 今回の結果と 直接比較してアスペリティの違いを議論することはあまり正確ではないという ことを意識して見比べてください。
今回の地震と1978年の破壊開始点はとても隣接しています.が,明らかに 1978年は破壊が北側に広がっていき,今回は規模も小さいので広がり は小さいですが,どちらかというと南西方向に広がっています.今回は 1978年の2つのアスペリティの隣で大きなすべりがあったように見えます.
もう一つこの付近では1936年にもM7.4の地震が起きています. データが少ないため解析精度がよくありませんが、1978年より南側で起きて います。今回の地震が1936年と同じアスペリティであったかどうかはもう少し 丁寧に調べる必要がありそうです。今後日本で観測された強震計の記録など とも比較しながら検討していきたいと思います。 (文責:山中)

は今回の震央.赤いコンターが今回の地震のすべり 分布。コンター間隔は0.3mで、0.3m以上すべった領域のみ表示している。

近地強震計波形記録を用いた解析はこちら