EIC地震学ノート No.164              Mar 28, 05 
                               東大地震研究所 

◆遠地実体波解析(暫定解)◆ -------------------------------------- 

3月28日のインドネシアの地震(M8.7) 

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● 概略・特徴: 3月28日夜(現地時間)にインドネシアのスマトラ島沖で M8.7の地震が発生しました。ニアス島などで被害が出ているとのことです.

USGSによる速報震源は次の通りです.

    発生時刻           震央          深さ   M
 05/03/28 16:09:36 (UT)  2.076°N    97.013°E    30.0   8.7

●データ処理: IRIS-DMCから収集した広帯域地震計記録(P波上下動48観測点, S波6観測点)を用いて解析しました.

●結果: 結果を図1に示します。 主な震源パラメータは次のとおりです.


 走向、傾斜、すべり角 =  (320, 12, 104)
 地震モーメント  Mo  =  1.3 x10**22 Nm  (Mw = 8.7)
  破壊継続時間(主破壊) T  = 120 s
 深さ          H = 27 km
 断層面積(WxL)     S = 120 x 250 km
 食い違い       Dmax = 約12 m

●解釈その他: 震源付近はスンダ海溝からインド−オーストラリアプレートが ユーラシアプレートの下に沈み込んでいるところです.今回の地震は昨年末起きた 巨大地震の南東隣で起きました.この地震も低角逆断層の典型的なプレート境界 地震です.大きくすべった領域はまさにニアス島の真下あたりにありました. それがニアス島での被害を大きくしていると思います.

この地震でもセーシェル,オマーンで約30cm,コロンボで25cm, モルディブで20cm,ココス諸島で10cmの津波が観測されたそうです. 今回の地震の津波が昨年末の地震に比べて大変小さいのは,大きくすべった 領域が比較的深く,海底の変動が小さかったためだと思われます.

この付近では1907年,1861年に巨大地震が起きています. USGSによる1861年の地震 の震源域をみるとほぼ今回の地震と同じ領域であることがわかります.今回の 地震も昨年末の地震と同様,100年以上前に動いたアスペリティが再び 動いたものと考えられます.前回は1861-1941という100年かけて動いたものが 今回は半年もしない間に一挙にひずみを解放してしまったということでしょうか? 日本の東南海,南海道地震がこれまで同時に起きるときもあれば,数日〜数年ずれて 起こることもあった,というのと同じです.今回の地震の さらに南側には1833年に巨大地震を起こしたアスペリティが存在します.今後 この領域も注意しておく必要があるのかもしれません.

図2:赤いコンターは今回の地震のすべり分布.コンター間隔は2m. 青いコンターは昨年末の地震のすべり分布.黒丸はUSGSによる余震.

                            (文責:山中)

注:昨年末のスマトラ地震は1861年の地震と1881年の地震が同時に壊れた のではないかと考えました.が,どうも調べてみると1907年の地震の方が 1861年の地震より北側で起こったようです.このころの地震については 正確なことはわかりませんが,昨年末の巨大地震は1907年,1881年(そして おそらく1941年)のアスペリティが一挙に壊れた,そして今回の地震は 1861年のアスペリティが再び壊れたのではないかと考えています.