EIC地震学ノート No.163 Mar. 20, 05 Mar. 28, 05 東大地震研究所 ◆遠地実体波解析(暫定解)◆ -------------------------------------- 3月20日福岡県西方沖の地震(Mj7.0) ----------------------------------------------------------------
● 概略・特徴: 3月20日10時53分(JST)に福岡県の西方沖で
Mj7.0の地震が発生しました。この地震で玄海島などで家屋の被害もかなりで
ています.けが人も出ている模様です.
気象庁による速報震源は次の通りです.
発生時刻 震央 深さ M 05/03/20 10:53 (JST) 33.90°N 130.20°E 9 km 7.0
●データ処理: IRIS-DMCから収集した広帯域地震計記録(P波上下動31,SH波4)
を用いて解析しました.
●結果: 結果を図に示します。
主な震源パラメータは次のとおりです.
走向、傾斜、すべり角 = (302, 87, -5) 地震モーメント Mo = 8.7 x10**18 Nm (Mw = 6.6) 破壊継続時間(主破壊) T = 8 s 深さ H = 12 km 断層面積 S = 15 km x 15 km 食い違い Dmax = 1.4 m
●解釈その他: 今回の地震は概ね北西−南東方向のほぼ垂直に立った断層面を
持つ横ずれ地震(東西圧縮)だったと思われます.
気象庁や防災科技研で発表されている余震分布もきれいにこの走向に
並んでいます.今回の地震は海域で起こりましたが,これを延長した陸域にも
やはり北西ー南東方向の走向を持つ活断層が見られます.
この付近では1900年代までさかのぼっても大きな地震が起こっていません.私も玄界灘でM7.0と聞いた
ときは思わず「うそ!」と声を上げてしまいました.
津波注意報が出ましたが,津波は観測されなかったと言うことです.
今回の地震は横ずれだったこと,深さ12kmと少し深めだったため海底まで断層がでなかったのだと
思います.
まだ被害の全貌はわかりませんが,大きな被害になっていないことを祈るのみです.
(文責:山中)
P.S.
K-net,KiK-netのデータを用いてより詳細な解析をしてみました.使った観測点は
こちらです.その結果
大きくすべった領域は破壊開始点の南東側のより浅いところにあることがわかり
ました.ちょうど玄界島のすぐそばになります.結果はこちら.これらの結果はそれぞれ手法は違いますが,同様のデータセットを使った地震研強震動グループ,京大防災研,防災科技研,の結果と概ね一致します.