EIC地震学ノート No.161              Dec 28, 04 
                               東大地震研究所 

◆遠地実体波解析(暫定解)◆ -------------------------------------- 

12月26日のインドネシアの地震(Mw9.0) 

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● 概略・特徴: 12月26日早朝(現地時間)にインドネシアのスマトラ島沖で
Ms9.0の地震が発生しました。この地震で津波が発生しインド洋を囲む諸外国で
2万人を越える方が亡くなられました.

USGSによる速報震源は次の通りです.

    発生時刻           震央          深さ   M
 04/12/26 00:58:51 (UT)  3.251°N    95.799°E    10.0   9.0

●データ処理: IRIS-DMCから収集した広帯域地震計記録(P波上下動38観測点,
S波10観測点)を用いて解析しました.

●結果: 結果を図1に示します。
主な震源パラメータは次のとおりです.

 走向、傾斜、すべり角 =  (330, 8, 90)
 地震モーメント  Mo  =  1.8 x10**22 Nm  (Mw = 8.8)
  破壊継続時間(主破壊) T  = 200 s
 深さ          H = 32 km
 断層面積       S = 150 x 560 km
 食い違い       Dmax = 13.9 m

●解釈その他: 震源付近はスンダ海溝からインド−オーストラリアプレートが
ユーラシアプレートの下に沈み込んでいるところです.(この付近の詳しいテクト
ニックマップはUSGSのHPにあります.)この付近ではこれまでにもM7クラス程度
の地震は起きていましたが,これほどの地震が起きるとは私は思っていませんでした.
新聞にも報道されているように1900年代以降に起きた地震としては5番目に大きな
地震でした.
規模が大きいため日頃の解析よりもかなりグリッドサイズを大きくして計算して
います.今回の地震は破壊開始点より約200-500kmほど北にある2つのアスペリティ
がすべったことがわかりました.そのため巨大な津波が発生し,タイやスリランカ,
インドに大きな被害をもたらしたものと考えられます.破壊開始点付近にも大きく
すべった領域があります.ここだけでもM8クラスのエネルギーを放出しています.

図2:コンターは今回の地震のすべり分布.コンター間隔は2m. 赤丸は余震(USGSによる).

                            (文責:山中)

P.S.今回は家族に不幸があったため解析が遅れてしまいました.刻々と広がって いく被害の報道を見て迅速で的確な情報の大切さを感じました.また津波にも 逃げずに眺めていた方々の映像を目にし教育の大切さも感じました. それにしてもUSGSからのMs8.9というQEDメールを受け取ったときあまりの地震規模 の大きさに目を疑ってしまいました.そしてその後どんどん広がっていく被害に 言葉を失ってしまいました.亡くなられた多くの方々のご冥福をお祈りします.