EIC地震学ノート No.155              Nov 14, 04 
                               東大地震研究所 

◆遠地実体波解析(暫定解)◆ -------------------------------------- 

11月11日のインドネシアの地震(Ms7.4) 

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● 概略・特徴: 11月12日早朝(現地時間)にインドネシアの東ヌサトゥンガラ州 アロル島でMs7.4の地震が発生しました。この地震で少なくとも17人が死亡、負傷者 も約100人に達しているようです.

USGSによる速報震源は次の通りです.

    発生時刻           震央          深さ   M
 04/11/11 21:26:41 (UT)  8.184°S   124.795°E    10.0   7.4

●データ処理: IRIS-DMCから収集した広帯域地震計記録(P波上下動32観測点) を用いて解析しました.

●結果: 結果を図1に示します。

主な震源パラメータは次のとおりです.

 走向、傾斜、すべり角 = (72, 16, 82)/(260, 74, 92)
 地震モーメント  Mo = 2.4 x10**20 Nm (Mw = 7.5)
 破壊継続時間(主破壊) T = 40 s
 深さ          H = 24 km
 食い違い       Dmax = 4.6 m

●解釈その他: 震源付近は南側にあるスンダ海溝からインド−オーストラリア プレートがユーラシアプレートの下に600kmを越える深さまで沈み込んでいるところ です.が,今回の地震はこの沈み込みの地震ではなく海溝の内側の浅い地震でした. マイクロプレートの境界がこの付近にあるという考えもあるようですが,とても 複雑なところでよくわかりません.下の図は1977年以降に起きた浅い地震のCMT解 (ハーバード大による)です. 今回と同様の規模の大きな地震が起きていることがわかります.
ここでは南下がりの低角の節面を断層面とする解を示していますが,遠地実体波 解析からは北下がりの高角の断層面のどちらが断層面か判断することは難しい です.
今回の特徴はとても波形が複雑なこと,また破壊伝播がとても遅い(Vr[max]=1.7km/sec) ということです.海底地形もかなり複雑なのでその影響で波形が複雑になっている のかもしれません.が,今回の計算にはその影響は考慮していません.

図2:コンターは今回の地震のすべり分布.コンター間隔は1m. 赤丸は余震(USGSによる).青い★は過去に起きたM7以上の地震の震源.

                            (文責:山中)