EIC地震学ノート No.154+              Nov 11, 04 
                             東京大学地震研究所

◆近地強震計データ解析(暫定解)◆ -------------------------------------- 

10月新潟県中越地方の地震(Mj6.8,Mj6.5,Mj6.1) 

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●EIC地震学No.154では遠地実体波を用いて10月23日に発生した新潟県中越地震の 震源過程解析を行った.その結果とその後の余震観測の結果から本震は北西傾斜の 断層面を持ち,破壊は浅い方向に向かって北東に進んだことがわかった.
ここではK-net, KiK-netのデータを用いてより詳細な震源過程を調べた.また遠地 では本震の表面波に隠れて解析ができなかった最大余震(Mj6.5),27日に起きた余震 (Mj6.1)についても解析した.

●方法:震源の位置は酒井らによって求められたものを用い,遠地実体波解析 あるいは防災科学技術研究所F-net Project による広帯域地震波形を用いた メカニズム解析結果や気象庁CMT解を参考に断層面は固定して断層面上のすべり分布 を求めた.K-net, KiK-netのデータは速度波形に直し0.02-1Hzのバンドパスフィルター をかけた.破壊継続時間が遠地解析から15秒程度はあることから,解析にはP波 到達から15-25秒を用いた.手法はKikuchi et al.(2003)でグリッドサイズは3-4km である.この付近では堆積層が厚くため酒井らが震源決定に用いた構造を元に 東側と西側で1次元水平多層構造を変え,グリーン関数を計算した.

●結果:求められたすべり分布,波形の比較を図1−3に示す.

 本震最大余震27日余震
メカニズム(215, 57, 98)(221, 59, 78)(33, 24, 90)
破壊開始点の深さ13.2 km15.6 km14.9 km
Mo (Nm)9.0x10**18 Nm (Mw6.6)4.0x10**18Nm (Mw6.3)1.3x10**18Nm (Mw6.0)
断層面積24 x 8 km12 x 8 km6 x 6 km
最大すべり量(m)0.9 m0.9 m0.8 m
応力降下8.5 MPa11 MPa15 MPa

本震:遠地実体波解析の結果と同様,破壊は浅い方へそして北東方向に 進んでいったことがわかる.南西方向ではかなり浅い部分で大きくすべっており, これが小千谷,川口町などの被害を大きくしたのかもしれない.またアスペリティは2つで,くびれ部分は 地震活動でも変化しているように見える.南側のアスペリティはほぼ純粋な 逆断層であるのに対し,北側のアスペリティは多少横ずれ成分を含んでいる. 最大すべり量は0.9mとこれまでの解析より小さめになった.波形をみても多少 計算した方が振幅が小さめであることから実際にはもう少しすべっていると 考えられる.もう少しローカルな構造を考慮する必要がありそうだ.

最大余震:規模はMw6.3で防災科技研F-net Project による解析とも一致する. 破壊はほぼ純粋な逆断層で,本震とは逆に北から南に伝播していった.破壊 開始点は本震の2つのアスペリティの間に位置する.

27日余震: 本震の2つのアスペリティのくびれ付近で起こった地震で, 規模の割には断層面積が小さく,従って応力降下が大きめに求まった.

すべり量分布と余震分布.コンターは0.1m間隔で本震は0.4m以上すべったところ,余震は 0.3m以上すべったところをプロットした.余震分布は酒井ら(地震研)によるものを 使わせて頂いた.                             (文責:山中)